当サイトの注目記事


2009.11.07 (Sat)

サラセミアの概念・診断・治療

サラセミアの概念


サラセミアとは、特定グロビン鎖の遺伝的な合成障害により、先天性溶血性貧血を起こす疾患である。1925年CooleyとLeeによって記載された重症の遺伝性溶血性貧血で、小球性低色素性貧血、無効造血、肝脾腫、皮膚色素沈着と特有の骨変化を合併する。

グロビン鎖遺伝子DNAから蛋白合成までのいずれかの過程で異常があり、特定のグロビン鎖合成が選択的に抑制され、α鎖と非α鎖(β、γ、δ鎖など)との産生に不均衡が生じる。その結果、小球性低色素性貧血を起こす。

産生が低下するグロビン鎖により、αサラセミア、βサラセミア、δβサラセミア、ヘモグロビン(Hb)構造変異型に分類される。遺伝子型からはホモ接合型とヘテロ接合型に、臨床症状からは重症型、中等症型、軽症型に分けられる。

産生が抑制されていない単鎖グロビン鎖は過剰に産生され、不安定な状態で赤血球内に変性沈殿する。この変性封入体をもつ赤芽球や赤血球は網内系で貪食され、溶血を起こす。さらに、骨髄内で無効造血を起こし、赤血球造血が著しく亢進し、その結果、特有な骨変化を伴う。

本症は地中海沿岸地域に多発することから、“サラセミア(地中海性貧血)”と呼ばれる。その他、アフリカ全土、東南アジアなどに多く、世界中どの民族にも例外なくみられる。日本では、βサラセミアは1,000人に1人の頻度、αサラセミアはそれより頻度が低い。ただし大部分は軽症で、貧血は軽度である。

サラセミアの診断


サラセミアでは、網赤血球数(Ret)増加、標的赤血球の出現、血清鉄や血清フェリチンは正常であることなどから診断できる。確定診断には、Hb解析、遺伝子解析が必要となる。これら検査で、小球性低色素性貧血をきたす鉄欠乏性貧血(IDA)、鉄芽球性貧血、無トランスフェリン血症、悪性腫瘍・慢性感染症・慢性関節リウマチ(RA)などに続発する貧血などとの鑑別を要する。

末梢血液検査では、小球性低色素性貧血で、赤血球大小不同(anisocytosis)と、標的赤血球(target cells)などの奇形赤血球がみられる。血液生化学検査では、血清鉄は正常か増加。赤血球浸透圧抵抗は一般に増大する。

骨髄検査では、赤芽球の過形成〔顆粒球系細胞/赤芽球系細胞(M/E比)が低値〕がみられる。Hb解析では、Hb組成に異常がみられる。遺伝子解析では、グロビン鎖遺伝子の欠失、塩基置換、塩基欠失、塩基挿入などがみられる。

サラセミアの治療


一般に慢性溶血性貧血では、赤血球産生亢進に伴い葉酸の需要が高まるため、葉酸(フォリアミン)の少量投与(0.15〜0.3mg/日)を行う。サラセミア-ホモ接合の重症例では輸血、摘脾、鉄キレート薬による治療が中心となるが、最近では骨髄移植による治療も行われている。

重症の貧血の場合は、長期間にわたる計画的な輸血が必要となる。血液製剤は白血球と血漿成分を除去した白血球除去洗浄赤血球を用いるべきである。Hb7.5g/dl以上では発育・成長にあまり支障はないので、輸血はヘモシデローシスの発症をできるだけ予防するために必要最小限にするとともに、鉄キレート薬の併用が望ましい。

約40gの鉄で臓器障害の症状が出現し、60g以上では心不全に至る。現在、最も有効な鉄キレート薬はdesferrioxamine(デスフェラール)で、1日あたり1.0〜2.0g筋注する。

頻回な輸血が必要な例では摘脾が、絶対的適応となるが、巨大脾腫による機械的圧迫症状の出現、脾機能亢進による血小板・白血球減少が出現した場合も、摘脾の適応となる。若年では摘脾により致死的な敗血症を起こす危険性が高いので、可能であれば5〜6歳以後に行う。

【関連記事】
鉄欠乏性貧血の治療について

Bernard-Soulier症候群の診断と治療

タグ : サラセミア

EDIT  |  09:31  |  血液・膠原病・アレルギー  |  TB(0)  |  CM(0)  |  Top↑

2009.11.05 (Thu)

血液型不適合妊娠

血液型不適合妊娠の概念


血液型不適合妊娠とは、血液型の不一致を示す配偶者間の妊娠において、母体と胎児との血液型が異なるために胎児の溶血を引き起こす可能性のある妊娠を指す(母体にみられない赤血球型抗原が児に存在する妊娠)。

母体がすでに赤血球抗体をもっている場合や、微小な絨毛の破綻などにより胎児血球が母体血中に流入し、母体側で形成された抗体(抗原をもつ児赤血球が何らかの原因で、母体血中に入ると母体内に免疫抗体が産生される)が、胎盤を通過して胎児側に逆移行して発症する。その抗体が再び児に入ると抗原抗体反応を起こし、胎児・新生児溶血性疾患を発生する。

臨床的に問題となるのは、胎児・新生児溶血性疾患(hemolytic disease of the fetus and the newborn;HDN)の発症であり、ほとんどはRh式血液型(D、C、E、c、eなど)の英式表現でD因子(米式表現:Rho)の不適合による。

最初の感作は Rh+の胎児の妊娠や流産によって生じる。妊娠する毎に免疫化が重症化する。胎児あるいは新生児は脳関門を通過した間接ビリルビンにより致死的な障害を起こす(核黄疸、胎児性赤芽球症)こともある。

次のような機序でD因子陰性婦人が感作され妊娠すると、D因子不適合既感作妊娠になる。
1)D陽性不適合輸血:約半数が感作されていて児への影響も大きい。
2)分娩:分娩中や分娩後のD陽性胎児血との接触による。
3)経胎盤母体輸血:妊娠経過中にも胎児血は母体血中に漏れ出る可能性がある。
4)人工妊娠中絶、自然流早産:子宮内操作などでの胎児血との接触による。

その他に、ABO式血液型の不適合やその他の血液型亜型の不適合が考えられるが、ABO式血液型における抗A抗体や抗B抗体は規則性抗体(それら以外を不規則性抗体という)で正常でも存在し、臨床的にHDN(胎児・新生児溶血性疾患)発症の可能性があるのは母体がO型で児がAまたはB型の場合である。

Rh式血液型不適合妊娠とくにRh0(D)因子によるものが多く、ABO式血液型不適合によるものは発生頻度は多いとされるが、重症のものは少ない。

血液型不適合妊娠の診断


妊娠初期のスクリーニングでD因子陽性で不規則抗体がなければ、以後の検査は不要となる。不規則抗体があれば抗体の同定と抗体価の測定が必要となり、HDNの検索を要する。

D因子陰性であれば、既往妊娠歴や輸血歴を確認し、間接クームステストで抗Rh抗体の有無を検査する。同時に夫の血液型を検査し、Rh陰性であれば児も100%陰性なので以後の管理は必要ない。夫が陽性(DDまたはDd)の場合、遺伝子がDDの同型接合体であれば100%児はD陽性(Dd)となり、Ddの異型接合体であれば50%の児がD陽性となり、D因子不適合妊娠となる。

血液型不適合妊娠の治療


羊水のOD450値や、胎児血のヘモグロビン値を調べて治療の必要性を決定する。妊娠32週以降は子宮外治療が原則となる。

胎児への輸血は腹腔内か、臍帯静脈内(臍帯穿刺)に行う。子宮外治療が可能な時期まで輸血を繰り返し、出生後には溶血性貧血に対する治療(交換輸血、光線療法、免疫グロブリン療法)を行う場合もある。

交換輸血にて、交換量は循環血液量の2倍で、通常約160〜180 ml/kg である。使用血液は、RhD 不適合で児とABO 型同型、Rh型陰性血液を使用する。胎内輸血または生後すぐに交換輸血が必要な場合、O型Rh型陰性の赤血球濃厚液または全血液を使用する(前もって母親との交差試験が必要)。ABO 型不適合の場合は、O 型赤血球とAB 型血漿の合成血または O型血液を使用する。

タグ : 血液型不適合妊娠

EDIT  |  17:15  |  小児科  |  TB(0)  |  CM(0)  |  Top↑

2009.11.03 (Tue)

潰瘍性大腸炎の診断に必要な検査

潰瘍性大腸炎の実際の診断手順は

1)慢性の(粘)血便、または血性下痢より本症を疑う。
2)糞便の細菌学的検査、寄生虫検査などによって感染性腸炎を除外する。
3)内視鏡検査、生検によって本症を確診する。


という手順がとられる。また、注腸X線検査が行われることもある。

注腸X線検査
前処置を行わない活動期の注腸X線検査はS状結腸より口側の深部大腸の様相を大まかに知るのに有用であるが、粘膜の軽微な異常や出血はとらえることができない。重症例では下剤、浣腸などの前処置は禁忌であり、前処置なしで薄いバリウムを用いた充満法により注腸X線検査を行う。


重症例では下剤、浣腸などの前処置は禁忌である。前処置なしで薄いバリウムを用いた充満法により注腸X線検査を行う。検査による増悪の予防のために、バリウムの中に水溶性プレドニゾロン40〜60mgを混入しておく。腹部単純X線写真で中毒性巨大結腸症が疑われるときは注腸検査は禁忌である。

 1)活動期のX線像:腸管の径および長さの短縮、およびハウストラの消失により鉛管像を呈する。また不整形潰瘍、微細な淡いニッシェ、鋸歯状辺縁、大小のprofile nicheなどがみられ、重症ではカラーボタン状潰瘍がみられる。
 2)緩解期のX線像:前述した管腔の異常、炎症性ポリポーシス、mucosal tagあるいは粘膜橋、粗造または細顆粒状の粘膜、network patternの乱れなどがみられる。しかし軽症で緩解期の場合は、X線的に異常を示さないこともある。
これらのX線所見は内視鏡所見と同様、直腸からびまん性、連続性に上行してみられる。

内視鏡検査
病期も含めて、潰瘍性大腸炎の診断には大腸内視鏡検査は必須である。下剤・浣腸により病勢が悪化することがあるので、原則として前処置は行わない。

活動期であれば、頻回の下痢のため残留便はほとんどみられない。できるだけ送気を少なくし、下部大腸を短時間に観察して、腸管穿孔や出血を増悪させないように注意深い操作が必要である。病変が肛門輪を越えてすぐから連続性、びまん性であることを確認するとともに、内視鏡的重症度を判定する。患者の苦痛がなく、重症でなければ、活動期粘膜の口側正常粘膜を確認できるまで挿入してもよい。

 1)活動期の内視鏡像:活動期の内視鏡像は、軽症では発赤、浮腫、顆粒状粘膜、びらんがみられる。中等では出血性膿、粘液付着、潰瘍などが、重症では出血、下掘れ潰瘍などがみられる。略緩解期には小腸絨毛状の粘膜がみられる。
 2)緩解期の内視鏡像:緩解期には炎症性ポリポーシス、粘膜橋、血管透見像の消失または不整などがみられる。

生検病理組織学的所見
活動期には炎症の程度に応じて粘膜の萎縮、炎症性細胞浸潤、杯細胞の減少、陰窩膿瘍などの所見がみられるが、陰窩膿瘍は本症に特異的な病理所見ではなく、感染性腸炎などでもみられるので注意を要する。

【関連記事】
潰瘍性大腸炎の診断について

Crohn病と潰瘍性大腸炎

タグ : 潰瘍性大腸炎

EDIT  |  14:15  |  消化器  |  TB(0)  |  CM(0)  |  Top↑

2009.11.03 (Tue)

潰瘍性大腸炎の診断について

潰瘍性大腸炎の概念


潰瘍性大腸炎とは、主として粘膜を侵し、しばしばびらんや潰瘍を形成する大腸の原因不明の非特異性慢性炎症性腸疾患である。Crohn(クローン)病とあわせて炎症性腸疾患inflammatory bowel disease(IBD)と呼ばれる。

近年、本邦でも有病率や発症率が上昇し、2004年の統計では患者数が8万人を超えている。初発年齢は10〜60歳代で、特に20〜30歳代が多い。

持続性、反復性の下血、粘血便、下痢を主症状とし、X線・内視鏡検査では血管透見の消失した顆粒状粘膜やびらん、潰瘍を連続性に認める。組織学的には粘膜・粘膜固有層の非特異的な炎症細胞浸潤や上皮の破壊がみられる。

病因は不明であるが、現在では遺伝的因子と環境因子が複雑に絡み合って、なんらかの抗原が消化管の免疫担当細胞を介して腸管局所での過剰な免疫応答を引き起こし、発症と炎症の持続に関与していると考えられている。

潰瘍性大腸炎の症状


主要症状としては、粘血便はほぼ必発の症状である。そのほか、下痢、腹痛、食欲不振、体重減少などがみられる。徴候・身体的所見としては、貧血、発熱、頻脈や腸雑音の亢進、圧痛などを認めることがある。

本症の臨床所見は病変範囲や重症度によって著しく異なる。直腸炎では排便時の出血以外、ほとんど無症状であるが、病変の範囲が広がり、重症度がひどくなると出血量が増して粘血・膿性便となる。また下痢の回数は増加して腹痛を伴い裏急後重を起こすようになり、発熱、頻脈、食欲不振、やせなどの全身症状を伴う。これらの臨床所見によって重症度分類が行われている

潰瘍性大腸炎の分類


分類としては、厚生労働省の特定疾患調査研究班により、病型、病期、罹病範囲、重症度、経過などによって以下のように分けられている。

病変の広がりによる病型分類 
1)直腸炎:病変が直腸に限局するもの。
2)左側大腸炎:病変範囲が横行結腸中央より肛門側にあるもの。
3)全大腸炎:病変範囲が横行結腸中央より口側に及ぶもの。
4)右側大腸炎または区域性大腸炎:病変部位が盲腸、上行結腸など右側結腸に限局しているもの。この病型の頻度は約1%ときわめて低い。

病期による分類:活動期と寛解期に分類される。

重症度による分類下痢、血便の程度、発熱、頻脈、貧血など全身症状の有無によって軽症、中等症、重症の3段階に分けられている。さらに重症のなかでも重篤なものは激症に分類されている。この分類は治療法や予後と関連し、重要である(以下の表参考のこと)。

臨床経過による分類
1)再発寛解型:初回発作が寛解した後、再発を起こしたもの。
2)慢性持続型:6か月以上活動期が続いているもの。
3)急性電撃型:激症で発病し、予後不良のもの。
4)初回発作型:初回発作のみで、その後の再発がないもの。


重症度分類は、以下の表により行われる。

重症中等症軽症
排便回数6回以上重症と軽症の中間4回以下
顕血便+++(+)〜(−)
発熱37.5℃以上(−)
頻脈90/min以上(−)
貧血Hb 10 g/dl以下(−)
赤沈30 mm/時以上正常

また、激症の診断基準は、
1)重症基準を満たす。
2)15回/day以上の血性下痢が続いている。
3)38℃以上の持続する高熱がある。
4)10,000/mm^3以上の白血球増多がある。
5)強い腹痛がある。
さらに、発症の経過により急性激症型と再燃激症型に分ける。

診断基準としては、

次の(1)のほか、(2)のうち1項目、及び(3)を満たし、(4)の疾患が除外できれば、確診となる。
(1) 臨床症状
持続性又は反復性の粘血・血便、あるいはその既往がある。
(2)
[I] 内視鏡検査
(a) 粘膜はびまん性に侵され血管透見像は消失し、粗糙又は細顆粒状を呈する。
更に、もろくて易出血性(接触出血)を伴い、粘血膿性の分泌物が付着しているか、
(b) 多発性のびらん、潰瘍あるいは偽ポリポーシスを認める。
[II] 注腸X 線検査
(a) 粗糙又は細顆粒状の粘膜表面のびまん性変化、
(b) 多発性のびらん、潰瘍あるいは偽ポリポーシスを認める。その他、ハウストラの消失(鉛管像)や腸管の狭小・短縮が認められる。
(3) 生検組織学的検査
主として粘膜固有層にびまん性炎症性細胞浸潤があり、同時に杯細胞の減少又は消
失、びらん、陰窩膿瘍や腺の配列異常などが認められる。

(2)、(3)の検査が不十分、あるいは施行できなくとも、切除手術又は剖検により、肉眼的及び組織学的に潰瘍性大腸炎に特徴的な所見を認める場合は、(4)の疾患が除外できれば、確診とする。
(4) 除外すべき疾患は、細菌性赤痢、アメーバ赤痢、日本住血吸虫症、大腸結核、キャンピロバクター腸炎などの感染性腸炎、放射線照射性大腸炎、虚血性大腸炎、薬剤性大腸炎、クローン病、腸型ベーチェット、リンパ濾胞増殖症などである。

注:
1 稀に血便に気づいていない場合や、血便に気づいてすぐに来院する(病悩期間が短い)場合もあるので注意を要する。
2 所見が軽度で診断が確実でないものは「疑診」として取り扱い、後日再燃時などに明確な所見が得られたときに潰瘍性大腸炎と「確診」する。



【関連記事】
Crohn病と潰瘍性大腸炎

消化管ポリポーシスの概念およびその鑑別

タグ : 潰瘍性大腸炎

EDIT  |  14:02  |  消化器  |  TB(0)  |  CM(0)  |  Top↑

2009.11.02 (Mon)

高拍出性心不全とは

高拍出性心不全の概念


高拍出性心不全とは、高心拍出状態下で全身ないしは肺のうっ血状態を生じる病態である。

心機能低下により血液駆出の減少している病態か、動静脈瘻、貧血、甲状腺機能亢進症などにみられるように心拍出量はむしろ増加しているが、末梢組織の血液需要が多いことや短絡によって全身への血液供給が不足している病態かによって、低拍出性心不全、高拍出性心不全に分けられる。

臨床的には器質的心疾患がなければ両心不全を呈し、肺うっ血が目立たず、起坐呼吸を呈しにくいことが多い。

高拍出性心不全の原因疾患


高拍出性心不全の原因疾患としては、貧血、甲状腺機能亢進症、敗血症、動静脈瘻(動静脈が同時に損傷されると、交通ができ動静脈瘻となり高拍出性心不全となる)、脚気、多発性骨髄腫などで、原因が末梢にあり、組織の血流に対する需要が大きいこと、および全身血管抵抗の低下が特徴である。

【関連記事】
高拍出性心不全 (100B28)

内科学
EDIT  |  22:59  |  循環器  |  TB(0)  |  CM(0)  |  Top↑
 | BLOGTOP |  NEXT

*All archives   *Admin

ブログパーツ