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2008.06.29 (Sun)

血液ガス分析の臨床的評価法について

血液ガスを読む場合、以下のような3段階の手順で分析することができる。

第1段階:pH、HCO3−、PaCO2の値から基本となる病態を把握する。すなわち、アシドーシスかアルカローシスか、代謝性か呼吸性かを判断する。
第2段階:AG(アニオンギャップ)、補正〔HCO3−〕を計算する。
第3段階:代償性変化が適当であるかどうか検討する。

具体的には、以下のようなステップで進んでいく。
・症例
22歳女性。自宅で倒れているのを家族に発見され、救急車で来院した。
Na 136mEq/L、K 4.2mEq/L、Cl 100mEq/L、HCO3− 14mEq/L、pH 7.38、PaCO2 24Torr、PaO2 110Torr

第1段階
pH 7.38と下がっていてアシデミアであり、HCO3−、PaCO2がともに低下しているので、代謝性アシドーシスがあると分かる。

第2段階
・AG=Na−Cl−HCO3-=136−100−14=22
→基準範囲(12+2mEq/L)より10mEq/L上がっていて、AG上昇型の代謝性アシドーシスがあることがわかる。

・補正[HCO3-]=AGの基準値12mEq/Lとの差に、実測HCO3−を加えた値=10+14=24
→補正[HCO3-]とは、アニオンの蓄積がなくAGの増加がないと仮定したときの仮想HCO3−である。24mEq/Lに届かなければ代謝性アシドーシス、超えていれば代謝性アルカローシスの合併があると分かる。

本例ではAG上昇型の代謝性アシドーシスを補正すると、HCO3−の基準値(24mEq/L)となり、AG正常型の異常はないことがわかる。

第3段階
酸塩基平衡異常に対する代償範囲は、以下の通りである(Δは、基準値であるpH:7.40、PaCO2:40Torr、HCO3-:24mEq/l、[H+] 40nEq/lからの変動を示す)。
  一次性変化 代償性変化 代償性変化の予測範囲 代償の限界値
代謝性アシドーシス HCO3-↓ PaCO2↓ ΔPaCO2=(1〜1.3)×ΔHCO3- PaCO2=15Torr
代謝性アルカローシス HCO3-↑ PaCO2↑ ΔPaCO2=(0.5〜1.0)×ΔHCO3- PaCO2=60Torr
呼吸性アシドーシス PaCO2↑ HCO3-↑ 急性:ΔH+=0.75ΔPaCO2 HCO3-=30mEq/l
慢性:ΔHCO3-=0.35ΔPaCO2 HCO3-=42mEq/l
呼吸性アルカローシス PaCO2↓ HCO3-↓ 急性:ΔH+=0.75ΔPaCO2 HCO3-=18mEq/l
慢性:ΔHCO3-=0.5ΔPaCO2 HCO3-=12mEq/l
本例の場合、
ΔPaCO2=(1〜1.3)×ΔHCO3-=(24−14)×1〜1.3=10〜13Torr
となる。実測の値であるPaCO2 24Torrというのは、この予測範囲(27〜30Torr)より明らかに低い。つまり、呼吸性アルカローシスを合併していると判断される。

これらから、本例では

・AG上昇型の代謝性アシドーシス
・呼吸性アルカローシス

を合併していることがわかる。本例では、アスピリンの大量服用によって、AG上昇型の代謝性アシドーシスと呼吸性アルカローシスを起こしていたのである。

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2008.06.29 (Sun)

塩基過剰(base excess)とは

・概念
塩基過剰(base excess;BE)とは、酸塩基平衡のうちで、代謝性(非呼吸性)の因子の状態を表す指標の1つである。血液ガス分析で得られた体のpHやP aCO2,HCO3−などの値から算出されるものである。

「血液を37℃、PaCO240Torrに平衡させた状態でpHを7.40に滴定するのに必要とされるアルカリの量」を指す。pH7.40より高値から滴定してくる場合は、酸の量ということになり、この場合はbase excessはマイナスの値をとることとなる。

・検査データ
基準値は、0±2mEq/Lである。測定法としては、血液ガス分析から計算する。検体量は、動脈血で1mLである。

・臨床的意義
上記から分かるとおり、base excessはその時点での体内のアルカリの増減が分かる(逆に言えば、アルカリの動きだけを表す指標ともいえる)。ただ、生体にとってその数値が、生理的に適切な量なのかどうかはわからない。

たとえば、一次性にアルカリが増えた状態(病的反応としてのアルカローシス)なのか、呼吸性アシドーシスでPaCO2が上昇したことに反応して、アルカリが増えた状態(生理的な反応としての呼吸性代償)なのかは判断できない。

そのため、体内のアルカリや酸の量が適切であるかどうかは体全体の酸塩基平衡緩衝系の動きと併せて考える必要がある。そのため、base excessのみを取り上げて評価するのは適切でなく、臨床的に判断を誤らせる可能性もある。

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