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インスリノーマの診断について

2008.09.15 (Mon)
インスリノーマとは、膵島腫瘍の一つで、膵β細胞が腫瘍化し血糖値による制御を受けないインスリン分泌を生じるため、空腹時の低血糖症を生じる疾患である。インスリノーマでは、腫瘍から過剰なインスリンが自律的に分泌されるため、肝臓からの糖放出が減少するとともに、末梢組織での糖利用が高まり、血糖が低下することになる。

発生頻度は約100万人に対して1人であり、膵内分泌腫瘍で最も多く、約4分の3を占める。血糖値と不相応にインスリン(IRI)高値を示す低血糖症の最多の原因となっている。男女比 1:1.5 と女性にやや多く、40~60歳に好発し、20歳以下および60歳以上は10%である。

腫瘍の80%は 2cm 未満である。90%近くは良性であり、80%が孤発性、5~10%が多発性である。多発性は内分泌腫瘍Ⅰ型(MENⅠ)に伴うものが多い(約 5%)。比較的膵尾部に多いが体部、頭部にも発生する。腸間膜など膵外に異所性に発生するものが 1~2%である。

【存在診断】
インスリノーマの存在診断としては、Whippleの3主徴が有名である。すなわち、

1)空腹時あるいは運動後に低血糖症状を起こす。
2)そのときの血糖値は40mg/dl以下(原著では50mg/dl)である。
3)ブドウ糖 投与による症状の改善


であるが、これは低血糖症すべてにいえることであり、インスリノーマに特異的なものではない。

診断には、1)低血糖(40mg/dl)、2)そのときの血中インスリン高値、を確認することが必要となる。具体的には、まず早朝空腹時の血糖値とインスリン値を同時に測定し、血糖値に対して過剰なインスリン値が認められるか否かを検討する。

この指標として、Fajansの指標(インスリン値/血糖値>0.3)および、Turnerの指数(インスリン値×100/血糖値-30>50)が提唱されている(後者のTurnerの指数のほうが感度および特異性は高いといわれている)。欧米の多数例の解析からは、

1)血糖値40mg/dl以下
2)インスリン6μU/ml以上
3)Cペプチド0.6ng/ml以上


がインスリノーマの診断に適するといわれている(ただし、このような基準を満たすインスリノーマは、必ずしも多くない)。

ほかにも、Serviceの診断基準として

・血糖値が2.5mmol/L(45mg/dl)以下である。
・さらに腎不全がない状態で、血中インスリン>36pmol/L(5μIU/ml RIA検査法)
・C ペプチド>200pmol/L
・プロインスリン>5pmol/L
(ただしsulfonylureaが陰性、insulin抗体陰性)


といったものがある。

尿ケトン体が陰性であり、血中3-ヒドロキシ酪酸も正常範囲である点が飢餓による低血糖と異なる。また、血中Cペプチドを測ることにより、インスリン注射による低血糖と鑑別できる。

早朝空腹時の採血を繰り返しても低血糖と相対的インスリン高値が証明できない場合には、24時間あるいは48時間の絶食試験を行い、血糖値を数時間ごとに測定し、同時に後の血中インスリン値測定のために採血しておく。低血糖症が生じた場合には血糖値とインスリン値の測定のために採血し、ブドウ糖投与あるいは摂食により絶食試験は終了する。インスリノーマの約9割では48時間以内に低血糖症状の出現が認められる。ほかにも、インスリン、トルブタミド、グルカゴン負荷試験などを行うこともある。

【局所診断】
上記の存在診断により、インスリノーマが強く疑われる場合には、局在診断に進む。大多数のインスリノーマは小さいということ(9割は直径2cm以下)である。

造影CT検査(腫瘤は血管に富む)や超音波検査(腫瘤は低エコー)での検出感度は20~50%程度であり、動脈造影(血管に富む腫瘤)でも50%とあまり高くはない。一方、経肝的選択的門脈サンプリングは、膵各部から血中インスリン値を測定することもあり検出感度は90%と高いが、侵襲も大きい。

さらに、選択的カルシウム動脈内注入による肝静脈サンプリングが行われることもある。これは、胃十二指腸動脈(膵頭部)あるいは脾動脈(膵体尾部)にカルシウムを注入し、肝静脈での採血であり、インスリン分泌の増加によって腫瘍が膵頭部か膵体尾部かを同定するものである。

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肝疾患と特徴的な画像診断

2008.02.20 (Wed)
  超音波像 CTスキャン 選択的肝動脈造影
単純 造影
肝内結石症 高エコー(acoustic shadowを伴う) HD (-) 所見(-)
肝細胞癌 低エコー、高エコー、モザイクエコーなど(大きくなればhalo) LD (+) hypervascular stainは静脈相以後ただちに消える。
単発性
転移性肝癌 低エコー、高エコーなど様々、bull's eye LD (+)~(-) hypovascular
多発性
肝血管腫 高エコー LD (++) hypervascular stainは静脈相以後も数分間続く
肝膿瘍 低エコー、粗い内部エコー LD ring状の造影 hypovascular
肝嚢胞 低エコー(後方エコーの増強) LD (-) 血管の圧迫・変形(+)
stainは(-)
脂肪肝 bright liver
肝腎コントラスト(+)
深部エコー減衰
肝辺縁の鈍化
LD (-) 所見(-)
肝硬変 表面凹凸結節
相対的左葉腫大
内部構造のびまん性乱れ
脾腫
  コルク抜き様所見
急激な細小化
肝疾患は、その形状からびまん性肝疾患と腫瘤性(限局性)肝疾患とに分けられ、画像診断ににおいて重要な分類となる。

・超音波像
びまん性肝疾患においては、急性・劇症肝炎、脂肪肝、肝硬変、日本充血吸虫、慢性肝炎などがある。びまん性肝疾患において基本的に注意すべき点は、

①肝臓の大きさ
②形態(右葉萎縮,左葉腫大など)
③肝表面の性状
④肝の辺縁の状態
⑤肝の実質内エコー
⑥肝内脈管
⑦脾腫の程度
⑧門脈側副血行路
⑨腹水の有無
⑩胆嚢の所見

などである。特に肝表面や肝の辺縁は慢性肝炎さらに肝硬変に進展するに従い、表面は凹凸状、辺縁は鈍化してくるため、びまん性肝疾患においては重要な所見となる。

肝実質の超音波所見もびまん性肝疾患の診断においては極めて重要である。すなわち脂肪肝においては肝実質のエコー輝度の上昇が特徴である。急性重症肝炎や劇症肝炎では、肝内の実質エコーの不均一性などがみられる。

腫瘤性(限局性)肝疾患においては、肝細胞癌、肝血管腫、肝膿瘍、肝転移、限局性結節性過形成(FNH)、胆管細胞癌などがある。

・CTスキャン
CTでは、全体像の把握、病巣の性状・大きさ・進展範囲、造影効果の時間的・空間的な広がり、胆管および膵管の拡張の度合いと閉塞部位、リンパ節の腫大の有無、病巣と周囲の主な血管との関係などの検討を行うことが出来る。

・選択的肝動脈造影
肝動脈造影とは、カテーテルの先端を総肝動脈または固有肝動脈に置いて水溶性ヨード造影剤を注入し、X線連続撮影を行う方法である。肝腫瘍の診断や治療的塞栓術を目的として行われる。

特に、肝細胞癌の診断に不可欠な診断法であり、肝細胞癌では動脈相で新生血管像(neovascularity)、次の実質相では腫瘍濃染像(tumor stain)といった特徴像が得られる。

肝血管腫は、その中心部は海綿状物質に置換されているので血流がなく、したがって綿花様(cotton wool appearance)と呼称されるように周辺のみが造影される特徴的画像を呈する。

肝嚢胞では、血管が構成成分にないので無血管領域(avascular area)としてとらえられる。

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