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僧帽弁閉鎖不全症

2007.02.26 (Mon)


僧帽弁閉鎖不全症



【概念】
僧帽弁の閉鎖不全により収縮期に左室より左房に向かって血液が逆流する状態。

【病因】
以前は、ほとんどがリウマチ性だったが激減し、非リウマチ性の腱索断裂によるものが多い。

・リウマチ熱

・粘液変性 myxomatous degeneration

・感染性心内膜炎
乳頭筋の壊死によって急性に発症する。

・僧帽弁輪石灰化
高齢者に多い。

・急性心筋梗塞後合併症
下壁梗塞後に僧帽弁の腱索が断裂し、乳頭筋不全によって僧帽弁閉鎖不全症となる。

・心内膜床欠損症
発生時の心内膜床の形成異常によって僧帽弁に亀裂を生じる。

【病態生理】
僧帽弁が完全に閉鎖しないため、収縮期に左室から左房へ血液が逆流する。したがって左房には容量および圧負荷がかかり、左室には容量負荷がかかる。その結果、心拍出量の減少と左房圧の上昇を招く。

・心拍出量を増大するために代償的に左室肥大が生じる
・肺水腫
僧帽弁閉鎖不全のまま左室の収縮力を高めるので、左室から左房への逆流量が増大し、左房の拡張が限界に達する と肺静脈圧の増加を招く。

【症状】
・起坐呼吸
左心不全から発展した肺水腫によって起坐呼吸となる。

・僧帽弁顔貌 mitral face
僧帽弁の弁膜症において見られる顔貌であり、毛細血管拡張のために頬が紅潮 malar flush し、一方で唇は チアノーゼを呈する。

・疲労感
・動悸
左房の拡大が心房細動を誘発するから。

【心音所見】
・固定性の全収縮期雑音 pansystolic murmur
このとき呼吸性変動はなく、三尖弁閉鎖不全症のRivero-Carvallo徴候との鑑別に役立つ。

・第1音の減弱
僧帽弁閉鎖が不完全となるから当然である。

・第3音の亢進
第3音は、拡張早期に心室が急速に血液で充たされるために生じた低周波性過剰心音である。このため1音と2音 のほかに、もう一つ心音が加わったことによる特有な三拍子を呈する(奔馬調 gallop rhythm)。

【検査所見】
・胸部X線写真
二重陰影 double density,double contour
左心房の拡大に伴ってその右下縁が右2弓の突出として右心房陰影に投影された影。

・心エコー所見
ドップラー法にて逆流を確認できる。

・心電図所見
左房拡大による左房性P波を生じることがある。

・心カテーテル検査
左室造影
左房への逆流が描出され、Sellersの重症度分類で利用される。
Ⅰ度:拡張期に造影剤が左室へ拍出されるので左房全体が造影されることはない。

Ⅱ度:左房全体が薄く造影される。

Ⅲ度:左房全体が左室と同じ濃度で造影される。手術の適応となる。

Ⅳ度:左房の濃度は1拍ごとに濃くなり、肺静脈をも造影する。

・心房波形
心房圧の測定にて左房圧が収縮期で上昇し、巨大なv波を形成するのが特徴である。

【治療】
NYHA分類で3度以上が手術適応となる。
・弁形成術
腱索の断裂した部位で僧帽弁後尖を切除し、これを再縫合して後尖を縮小させる。さらにリングを挿入して僧帽弁 輪を補強する。

・弁置換術

・弁輪縫縮術

【今日の一問一答】○or×
「僧帽弁閉鎖不全症ではⅢ音が聴取される。」
→答えはコチラ
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僧帽弁狭窄症とは

2007.02.23 (Fri)


僧帽弁狭窄症とは



【概念】
僧帽弁口面積の減少(弁尖の肥厚・交連部の癒合・腱索の癒合などによって)により、拡張期に左房から左室への血液の流入が障害されている状態をいう。大部分がリウマチ熱の後遺症(リウマチ熱などに合併する心内膜炎によって交連部と腱索が癒合)として発症し、20~40代の女性に多い(男:女=1:2) 。

【病態生理】
拡張期に左房から左室への流入障害を来たす結果、左房圧が上昇し、左房室間の圧較差が増大する。 この傾向は心拍数が上昇し、拡張期が短縮した場合に顕著である。

・肺水腫、後毛細血管性肺高血圧
僧帽弁の開放制限によって心室拡張期に左心房から左心室への血液流入が障害されると、左房圧が上昇する。 次に肺静脈圧が上昇し、ひいては肺動脈圧の上昇を招くと肺動脈の攣縮によって肺高血圧にいたる。

・右心不全、肺鬱血
悪化すれば右室肥大による右心不全となり、肺鬱血を招く。

・心房細動
左心房は肺静脈の血量を肩代わりして膨張し、やがて心房細動に陥る。塞栓症を合併する危険がある。

【症状】
続発した肺水腫によって咳嗽や呼吸困難などの呼吸器症状を呈し、特に運動時に増悪する。運動時に増悪するのは、心拍数が増加すると拡張期が短縮するので左心房から左心室への流入血液量が減少し、ひいては左房圧と肺血管圧を上昇させるからである。

・僧帽弁顔貌 mitral face
僧帽弁の弁膜症において見られる顔貌であり、毛細血管拡張のために頬が紅潮し、一方で唇はチアノーゼを呈する。

・起坐呼吸
起坐状態では呼吸が楽になる症状。起坐状態では肺静脈圧が低くなるから。

・心房細動による動悸

・喀血
肺水腫に起因する、ピンク色の喀痰である。しばしば大量の喀血を呈することがある。

・嗄声
拡大した左心房が反回神経を圧迫していることを示唆する。

・心音所見
心尖部でよく聴取する。

1)第1音の亢進
左房と左心との圧較差が大きく、僧帽弁自体の硬度も増しているために1音が増強される。

2)僧帽弁開放音 opening snap
僧帽弁前尖の開放によって生じる、2音の直後に続く高調音であり、本症の身体所見としては最も特徴的である。

3)拡張期ランブル diastolic rumbling murmur
拡張中期に「ドロドロ」と形容される低調なランブル音であり、心尖部を最強点とする。 拡張中期の僧帽弁における血流障害に起因し、房室間の圧較差が増大していることを意味する。

4)前収縮期雑音 presystolic accentuation
心房の収縮によって収縮期直前に拡張期ランブルに続いて心雑音を聴取する。

なお重篤化して肺高血圧にまで進展すると、機能的な肺動脈弁閉鎖不全によって Graham Steel雑音を聴取する。

【検査所見】
1)心電図所見
・左房性P波,僧帽性P波 P sinistrocardiale,mitral P
P波がIおよびIIにおいて幅が広く、V1で陰性部分の大きい二峰性となるものをいう。 本来は右房に遅れて左房が興奮するが左房の肥大によってこの傾向が強調されたもの。心房細動も起こりうる。

3)胸部X線所見
・二重陰影 double density
右心房を示す右第2弓のなかに拡大した左心房の陰影を見る。

・気管支分岐角の開大
拡大した左房によって左主気管支が挙上された所見である。

・心腰部の陥凹が消失する
間質性肺水腫所見

・肺血管の血流再分配
上肺野の肺血管が下肺野に比べて拡張する所見であり、後毛細血管性肺高血圧を示唆する。 おそらく心拡大による肺動脈の圧迫や低酸素性肺血管収縮によるものと考えられている。

・カーリーB線
小葉間隔壁の肥厚であり、間質性肺水腫で出現する。

4)心エコー所見
本症の診断にもっとも有効である。

・弁口の不明瞭化 looming
・僧帽弁の有効弁口面積の減少
・僧帽弁前尖の拡張期後退速度 DDRの減少ならびにA波の消失
→僧帽弁前尖の拡張期後退速度 DDRが減少するとともにA波が消失する。 その結果として僧帽弁の陰影がM形を示さず台形になる(シルクハット)。これは左心房圧が高いために拡張期中期で僧帽弁が一旦後退するのを妨げるからである。

・多重エコー
前尖後尖の平行移動
僧帽弁のシルクハット陰影と前尖後尖の平行移動が見られる。

5)心カテーテル検査
左房圧の上昇により、左室拡張期圧よりも肺動脈楔入圧の平均値のほうが高くなる。

【合併症】
・僧帽弁閉鎖不全症
・左房内血栓
・心室細動

【治療】
1)内科的治療
・抗不整脈薬
血行動態の改善は期待できず、もっぱら心房細動などの不整脈を予防する目的で投薬される。ジギタリスやβ遮断薬で心拍数を減少させると、拡張期が延長するので症状が改善される。

・経皮的僧帽弁交連切開術 percutaneous transluminal mitral commissurotomy, PTMC
左房からバルーンカテーテルを僧帽弁口に挿入し、これを拡張して交連切開を行なう。

2)外科的治療
外科手術の適応条件は 1) 左房内血栓, 2) NYHA 3度以上, 3) 心房細動 である。

・僧帽弁交連切開術
弁尖の可動性がよく、弁下部の変化が少ないものが適応となる。

・閉鎖式僧帽弁交連切開術 closed mitral commissurotomy, CMC
体外循環を使用せずに、左開胸で Logan-Tubbs拡張器で交連部を裂開する。

・直視下交連切開術 open mitral commissurotomy,OMC
体外循環下に僧帽弁切開を行なう方法であり、CMCに比べて交連切開の効果が高い。 特に左房内に大量の血栓が存在する場合には人工弁に置換するよりも直視下に血栓を除去したあと で交連切開を加える方法が最善である。

・僧帽弁置換術 mitral valve replacement,MVR
石灰化などで弁の荒廃が著しい症例や僧帽弁閉鎖不全を合併した症例が適応となる。

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