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多発性内分泌腫瘍(MEN)

2008.02.29 (Fri)
多発性内分泌腫瘍(MEN)とは、複数の内分泌臓器に過形成・腺腫・癌を発生する遺伝性疾患である。神経外胚葉などに由来するAPUD(amine precursor uptake and decarboxylase)系細胞の腫瘍化により発生する。

臨床像からⅠ型[Wermer(ウェルマー)症候群]と、Ⅱa(Ⅱ)型〔Sipple(シップル)症候群〕、Ⅱb(Ⅲ)型に分類される。MENⅠ型は人口10万人に対して 2~20人、MENⅡ型はいずれも人口10万人に対して 2人程度と報告されており、稀な疾患である。

MENⅠ型は癌抑制遺伝子と考えられているMENⅠ(メニン)遺伝子(第11染色体長腕11q)に変異や欠損が生じた結果、細胞が腫瘍化すると考えられている。MENⅡaとⅡb型は、ret遺伝子(第10染色体長腕10q)の変異によりチロシンキナーゼが、リガンドの存在なしに活性化するために起こり、神経内分泌臓器や神経節を腫瘍化すると考えられている。

以下のような症候がみられる。
MEN1型 副甲状腺腫瘍:最も頻度が高く、かつ最も早く20歳過ぎから発症する。副甲状腺機能亢進症による高Ca、低P血症、骨病変、尿路結石を認めるが、約40%は無症状である。
膵ランゲルハンス島腫瘍:ガストリノーマの頻度が高く、次いでインスリノーマ、グルカゴノーマの順となる。
下垂体腺腫:乳汁漏出性無月経症候群(プロラクチン)が最多である。先端巨大症(成長ホルモン)、Cushing症候群(ACTH)などもみられる。
MEN2A型 甲状腺髄様癌:ほぼ100%認められる。髄様癌では大量のカルシトニンが分泌されるが、多発性結節性甲状腺腫以外は無症状でありCa値も正常範囲である。
褐色細胞腫:約50%にみられる。褐色細胞腫は両側性に発症することが多いが、それ自体悪性のことは少なく、散発性のものと同様のカテコールアミン過剰産生の症状を示す。甲状腺髄様癌よりも数年遅れて症状が出現することが多い。
副甲状腫瘍:20%と少ない。
MEN2B型 甲状腺髄様癌:2A型よりも若年者に発症
褐色細胞腫:2A型よりも若年者に発症
副甲状腺腫瘍:ほとんど合併しない

・MEN1型は、下垂体(15~90%)、副甲状腺(95%)、膵Lagerhans島(30~80%)に腫瘍(または過形成)が多発する。それ以外にしばしばカルチノイド、脂肪腫、線維腫、副腎腫瘍を合併する。

・MEN2A型は、甲状腺髄様癌(100%)、副甲状腺腫瘍(20%)、副腎髄質の褐色細胞膜(50%)を合併する。

・MEN2B型は、甲状腺髄様癌(100%)と褐色細胞腫(50%)の合併はMEN2A型と同じだが、粘膜神経腫(口唇、結膜、舌~消化管)、巨大結腸、Marfan様体型などの身体的異常を伴う。副甲状腺腫瘍の合併はまれである。

診断としては、それぞれの腫瘍は時期を違えて発症し、合併頻度もさまざまに異なることから、単独の腫瘍を認めた場合に本症の存在を疑い内分泌学的検査を進め、家族歴を詳細に聴取することが重要となる。

遺伝子診断
MEN1型では、胚細胞変異はすべてのエクソンに存在しうるので、遺伝子全体を検索する必要がある。遺伝子診断では、血液リンパ球からDNAを抽出し、MEN1遺伝子のすべてのエクソンをPCRで増幅し、その塩基配列をダイレクトシークエンス法で決定する。

MEN2型の遺伝子診断には、感度・特異性とも優れたRET癌遺伝子の変異を指標として行う。血液リンパ球のDNAからPCR法で、まず変異の“hot spot”のエクソン(2Aでは11,2Bでは16)から開始して変異を検索する。

治療としては、腫瘍に対しては除去術を実施し、不足するホルモンである副腎皮質ホルモン、甲状腺ホルモン、インスリンなどに関しては補充療法を行う。副甲状腺腫に対しては全腺を摘出し、一部を自己移植する。膵腫瘍に対しては全摘は実施せず、腫瘍のみの核出術のほうがQOL維持のためには良いと考えられる。

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Cushing症候群の鑑別

2008.02.29 (Fri)
Cushing症候群とは、副腎皮質から分泌される糖質ステロイドの過剰によって起こる症候群を指す。成人女性に多く、中心性肥満や満月様顔貌、多毛、紫赤色皮膚線状などの症状を呈し、血清コルチゾールの上昇、尿中17α-ヒドロキシコルチコステロイド(17-OHCS)排泄増加がみられる。

病因としては、副腎皮質の腺腫・癌、原発性副腎皮質結節性過形成や異所性副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)産生腫瘍、下垂体過形成によるもの、下垂体の腺腫によるもの(Cushing病)に分類される。

ACTHが正常~高値ならば下垂体性もしくは異所性、ACTHが低値ならば副腎性もしくは医原性を疑う。また、デキサメタゾン抑制試験により腫瘍からの自律性分泌を証明することも重要である。腫瘍の局在診断は、CTやMRI、副腎アドステロールシンチグラフィーなどを用いる。

以下に、鑑別フローチャートを示す。
  正常
(単純性肥満)
原発性 続発性
副腎腫瘍 異所性ACTH 下垂体性
(Cushing病)
腺腫
2mgDCX抑制試験 抑制(+) 抑制(-)
   
8mgDCX抑制試験
CRH負荷試験
反応(-) 反応(+)
   
血中ACTH
   
副腎アンドロゲン
17-KS
注1)DCX:デキサメタゾン

注2)尿中17-ケトステロイド(17-KS)排泄量は、Cushing病や異所性ACTH産生腫瘍、副腎癌によるCushing症候群では高値となる。一方、副腎腺腫によるCushing症候群では、低値となる。これは、ACTHが抑制されるため、網状層からの副腎アンドロゲンの産生が低下するためである。

治療としては、以下のようなものがある。
・Cushing病では、経蝶形骨洞下垂体腺腫摘除術(Hardy手術)を行う。手術無効例や再発例では、放射線照射を行う。

・副腎腺腫や癌によるCushing症候群では、片側の副腎全摘術を行う。

・異所性ACTH産生腫瘍では、原病巣の摘除を図るが、困難なことが多い。

・副腎癌や異所性ACTH産生腫瘍では、副腎皮質ステロイド合成阻害薬であるトリロスタンやミトタンを用いる。

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