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顕微鏡的多発血管炎(MPA)について

2010.08.30 (Mon)
ANCA関連肺疾患(石井晴之 杏林大学医学部第1内科学 ICUとCCU, 34(1) : 17-24, 2010.)
 発症平均年齢は60歳代で、発熱、全身倦怠感や体重減少などの全身症状とともに呼吸器症状(咳噺,血疾,喀血,労作時呼吸困難)、血尿、蛋白症など肺と腎臓に臓器障害を認めることが多い。また筋肉、消化管、末梢神経皮膚、強膜・ぶどう膜脳血管中耳・副鼻腔,心臓なども障害される。この血管炎症状は多臓器障害が同時に起きる場合と一つの臓器障害が先行し、後に他臓器障害を認める場合がある。これらの臨床症状は血管炎を疑う所見であり,全身検索および病理組織学アプローチをすすめていく上で重要である。MPAの診断確定に基準が用いられることが多い。腎生検や肺生検での組織所見は,細動脈・毛細血管・細静脈の炎症細胞浸潤を伴った壊死性血管炎が認められる。MPAではMPOANCA陽性率65%、PR3-ANCA陽性率8%と報告されており、全身性WGにおけるPR3-ANCA陽性率90%の報告と比較してもMPAにおけるMPO-ANCA測定の有用性がわかる。
 MPAの22%に肺胞出血はみられるが、出血量により急速に呼吸不全が重篤化することがある。MPAにおけるびまん性肺胞出血の5年生存率が65%に対して、診断早期の死亡率が25%と重症呼吸不全での発症がみられる疾患9)で,重症例に対しては集中治療室での管理が要求される。しかし大量喀血をきたす頻度はむしろ少なく(9.1%)、大部分は少量の血疾や喀血、労作時呼吸困難の症状で経過する。また胸部異常陰影のみで自覚症状を認めない肺胞出血例も20~30%にみられる。
 MPO-ANCA関連血管炎では、間質性肺炎の合併することが多い。また特発性問質性肺炎として経過中に血管炎症状(肺出血や急速進行性腎炎など)が出現し、はじめてMPO-ANCA関連血管炎と診断される症例もある。有村らの報告では、10例(37%)のMPO-ANCA関連血管炎が腎病変に先行し特発性間質性肺炎と診断されていた。
 腎病変が診断されるまでの期間は平均7.2ヵ月(1~24ヵ月)であった。このMPO-ANCA陽性問質性肺炎は、fine cracklesの聴取、肺拡散能低下、拘束性換気障害、そして血清中KL-6、SP-D高値など特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)と同様の所見を認める。しかしIPFと比較し本症は,白血球数・血沈値,血清CRP値が高い傾向で抗核抗体やリウマチ因子(RF)の検出率が高いとされている。これらは腎障害の合併することとともにIPFと鑑別できる所見である。

ANCA関連血管炎・膠原病による腎障害の免疫抑制療法(有村義宏 杏林大学第一内科 Pharma Medica,28(2): 39-44, 2010)
 ANCA関連腎炎は、ANCA関連血管炎で生ずる全身性血管炎のなかで腎臓に認められる血管炎をいう。主な障害血管部位は糸球体毛細血管である。このANCA関連腎炎の特徴は、1)高齢者に多く(平均年齢60歳半)、顕微鏡的血尿、蛋白尿が必発であること。2)腎組織学的には、巣状・分節性壊死性糸球体腎炎で、発見が遅れると壊死性半月体形成性腎炎を呈すること。3)臨床的には急速進行性糸球体腎炎(rapldly progresslve glomerulonephritis;RPGN)の経過をとることが多く、透析導入率が高いことである。しかし、腎機能が正常、または軽度低下の時期に診断し免疫抑制療法を開始できれば、腎の予後は比較的良好である。
 MPO-ANCA関連血管炎では再発率が20~40%あり、長期間の免疫抑制療法が行われる。再燃率が高いのはPSL
10mg/日以下の維持量の場合が多いが、MPO-ANCA関連血管炎は平均発症年齢が60代と高齢者に多いため、長期のステロイド治療は骨粗繧症、糖尿病などの合併症を引き起こしやすい。このため、最近寛解維持薬として免疫抑制薬であるミコフェノール酸モフェチル(MMF)やミゾリビン(わが国で治験中)の有用性が報告されている。しかし、最近の大規模RCTでは、MMFはアザチオプリン(AZP)を上回る有効性は確認されなかった。

脳梗塞,次いで脳出血を合併した顕微鏡的多発血管炎の一例
 MPAの臓器病変としての脳血管病変は、厚生労働省・難治性血管炎に関する調査研究班のまとめで、最重症に分類されており、予後不良の合併症とされている。しかし、MPAに伴う脳血管病変は稀な病態で、まとまった報告はない。合併頻度も不明であるが、有村らはMPO-ANCA陽性血管炎46人のうち2例(合併率4.6%)に合併したと報告している。
 脳梗塞もしくは脳出血合併したMPAの13例の内、予後に関しては死亡6例、生存6例、不明1例であり、死因は脳出血3例、消化管出血2例、不明1例であった。MPO-ANCAが高値で疾患活動性の高い奨励に合併する可能性があり、予後不良であることが示唆された。

消化管潰瘍で発症し,急速進行性腎炎と多発肺結節を伴った治療抵抗性ANCA関連血管炎の1例
 血管炎症候群の消化器病変としては、消化管潰瘍、腹膜炎、消化管梗塞などがある。Pagnoxらは、消化管潰瘍の合併頻度は、結節性多発動脈炎が19例/62例と最多で、次いでWegener肉芽腫が5例/62例、CSSが4例/62例であったが、MPAでは消化管潰瘍の合併は認められなかった。
 GuillevinらはMPA85例の検討で消化器症状を30.6%に認め、消化管潰瘍によると考えられる症状の頻度は9.3%(下血4.7%、吐血3.5%、腸穿孔1.1%)であったと報告している。
 血管炎症候群の肺病変としては、肺胞出血、間質性肺炎、肺結節などがある。安藤らは胸部CTにて肺病変を伴うMPO-ANCA陽性血管炎51例について、スリガラス陰影が94%、浸潤影が78%と多く、肺結節は29%に認めたと報告している。

外科的肺生検を施行した間質性肺炎先行型顕微鏡的多発血管炎2症例の臨床病理学的検討(日本呼吸器学会雑誌, 48(4) : 274-281, 2010.)
 そもそもANCAは単に血管炎の指標であるのみでなく、好中球による血管内皮細胞障害に直接的に働くことにより病態形成にかかわっているとされており(ANCA-cytokine sequence theory)、実際肺胞毛細血管炎に起因する肺胞出血や糸球体毛細血管炎に起因する半月体形成性糸球体腎炎では、ANCA値も通常高値を示す。一方、間質性肺炎のみを呈する例では,ANCAは比較的低値を示すことが多いとされている。これまで間質性肺炎の成因については、有村らがそれぞれ報告しており、ANCAを基にした肺胞毛細血管内皮細胞障害の反復や肺胞への出血が原因であると推察している.また,聞質性肺炎の活動性の指標とされるKL-6とMPOANCAが相関したとの報告も見られ、これらの報告からはANCA-cytokine sequence theoryより生じた血管内皮細胞障害の結果として間質性肺炎が形成されたとする病態がうかがえる。

肺胞出血および急速進行性糸球体腎炎により再燃した顕微鏡的多発血管炎の一例
急速進行性糸球体腎炎診療指針作成合同委員会による「急速進行性腎炎症候群の診療指針」5)に,RPGN を呈したMPO
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肺膿瘍について

2010.08.29 (Sun)
気胸で発症し,両肺野に多発性結節性陰影を示したpeptococcus肺膿瘍の1症例
 基礎疾患のない若年健康人に両肺に多発性に腫瘤を形成した場合,骨肉腫等の転移性腫瘍や悪性リンパ腫が疑われるが、原発性肺膿瘍も鑑別診断の対象となる。原発性肺膿瘍の66%は50歳以上であり、男性に多い。
 誘因や基礎疾患は意識障害・嚥下障害による誤嚥・歯牙疾患・肺疾患が多く、基礎疾患不明は10%前後である。Bartlettらは肺膿瘍の92%から嫌気性菌が検出されたと報告している。
 菌種としてはpeptococcus・bacteroides・peptostreptococcus・fusobacteriumの順に多い。嫌気性菌は上気道・口腔内に多数常在し、同菌による肺感染症は誤嚥に依ることが多く、背側肺の下葉の上部と上葉の後部に好発し、胸膜を基にして肺門に向かってピラミット状に進展するが、誤嚥量の多寡によりその形態は一様ではない。
 健康人でも約50%が睡眠中に誤嚥するといわれ、本症例もそれにより経気道的に菌が散布された可能性が強く疑われる.嫌気性菌は口腔内常在菌のため喀痰培養では同定が難しい。

気管支鏡下擦過細胞診で肺腺癌と診断された肺膿瘍の1例
 肺悪性腫瘍における細胞診の偽陽性率(細胞診で肺悪性腫瘍と診断されたが、最終診断が悪性腫瘍ではなかったもの)は1.4~4.6%と報告されている。
 偽陽性を示した疾患は肺梗塞、器質化肺炎、慢性気管支炎、肺結核、気管支喘息、肺膿瘍、ウィルス感染、アンスラコーシス、肺線維症、放射性肺臓炎などが報告されている。これらの報告ではいずれも細胞診のみ陽性であった。
 Scogginsらの報告では、細胞診で肺癌と診断された325例のうち、最終診断が肺癌ではなかったのは、15例であった(偽陽性率4.6%)。15例中、肺梗塞3例、問質性肺炎1例、ウィルス・細菌などによる肺炎症性疾患を含む二次性のdysplasia 11例であった。二次性のdysplasiaは全偽陽性中の約70%であり、注意が必要である。炎症に伴う細胞の修復過程で異型を有するII型肺胞上皮細胞が出現すると考えられており、しばしば肺腺癌との鑑別が困難である。
 細胞診のみ陽性の症例では術中迅速病理検査が重要と考えられる.術中迅速診断を施行し、肺癌に準じた拡大切除を回避できた症例もあるが、術中迅速診断でも肺癌を否定できず、肺癌に準じた手術を施行した症例の報告もあり、注意が必要である。
 Scogginsらは細胞診で偽陽性を示した3例の肺梗塞について報告している.神過をretrospectiveに振り返ると、出現する異型細胞の数が少なく、孤立性、散在性であった。3例とも画像上の腫瘤陰影を有し、癌年齢で過度の喫煙歴が有り、細胞診の所見を支持するものとなったと報告している。

肺膿瘍破裂による膿気胸に対して胸腔鏡下手術を行った1例
 膿胸の原因として、肺炎が50%、胸部外科手術が25%、横隔膜下膿瘍が8~11%とされるのに対し、肺膿瘍破裂はわずかに1~3%とされている。われわれが検索し得た限り、本邦における肺膿瘍破裂の報告例は、自験例も含めて6例のみであった。年齢は3歳~64歳で、平均41.7歳、男性5例、女性1例であった。
 肺膿瘍の治療は抗生物質投与が原則であるが、抗生物質のみで治療効果が不十分の場合は、ドレナージを要し、さらには外科的治療を要する場合がある。

FDG-PETおよび胸部CT検査にて肺癌が疑われた肺膿瘍の2例
 FDG-PETにて右S6腫瘤に集積を認めた。診断治療目的に右下葉切除を施行。術後病理結果では、cysticなabscessであった。

アスペルギルス膿胸治療時に偶然発見された肺多形癌の1例
75歳、男性。1ヵ月前39°C台の発熱で前医を受診。右S9肺膿瘍の診断で抗生剤治療施行も、感染制御不全のために、当院へ転院。胸腔ドレナージ(20 Fr)と抗生物質治療で感染制御不良。極度の全身衰弱があり、救命のための開窓術施行となる。
 術中胸水培養でAspergillus fumigatusを検出、抗真菌剤の投与を開始。しかし肺膿瘍残存のため、2ヵ月後に開窓創より膿瘍切開を追加。膿瘍の病理組織像からアスペルギルス症と肺多形癌の合併と診断した。肺切除術の耐術能はなく、1週間に3度の包帯交換を要したが、開窓状態で退院となる。
 感染の制御の後、開窓創より電子線治療(2 Gy×25回)で局所制御を得られ、15ヵ月間比較的高いQOLを維持可能であった。しかし化学療法(DOC単剤→GEM単剤)は効果を認めず、再発およびリンパ節転移から、19ヵ月後に癌死となった。
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