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遺伝子診断および遺伝子多型について

2007.02.16 (Fri)


遺伝子診断および遺伝子多型について



Ⅰ.序
 遺伝子診断とは、遺伝病hereditary diseaseや癌のような個体内の遺伝子の構造変化や、ウイルス感染などの外界からの新たな遺伝子の侵入に起因する疾患において、病因となる遺伝子の分析に基づいて行う診断である。すなわち、遺伝子診断(検査)が適応となるのは、
1.感染症の遺伝子検査
2.遺伝病の遺伝子検査
3.造血器腫瘍の遺伝子検査
4.固形腫瘍の遺伝子検査
5.遺伝子多型解析
 などである。
 従来の生化学的検査や臨床的診断は変異遺伝子の表現型に基づくが、遺伝子診断では遺伝子そのものを調べるため、発症前診断preclinical diagnosisあるいは出生前診断prenatal diagnosis、さらに保因者診断carrier diagnosisも可能となった。また遺伝病では、検査する臓器を問わないため、胎児では絨毛や羊水細胞、出生後は末梢血白血球などを用いて診断することが可能である。具体的には、具体的には、1)発端者の確定診断、2)家族の保因者診断、3)次子の出生前診断、などの目的で行われる。以下では、遺伝子診断および遺伝子多型の概要について記してみたいと思う。

Ⅱ.遺伝子診断の方法
 遺伝子の構造変化としては、点突然変異point mutation,欠失deletion,重複duplication,増幅amplification,挿入insertion,逆位inversion,転座translocationなどがあり、遺伝子検査では、これらをサザンブロット法やPCR法、LAMP法などによって検出する。微少な変化に対しては、塩基配列決定法sequencingも併用される。遺伝子検査の種類としては、
1.DNA解析
 1)サザンブロット、RFLP
 2)PCR・PCR-SSCP法
 3)マイクロサテライト/ミニサテライト不安定性の検出
 4)FISH法・CGH法
2.RNA解析
 1)ノーザンブロット・RT-PCR
 2)in situ hybridization
 3)Differential Display
3.最新解析技術
 1)LAMP法
 2)ICAN TM 法
 3)NASBA法
 などがある。近年、白血病や悪性リンパ腫などの造血器腫瘍の分野では遺伝子変異の研究が行われ、多くの疾患において特異的な遺伝子異常が同定されつつある。これに基づきサザン法やPCR法により遺伝子診断が可能となった。その後治療反応性の評価に定量的遺伝子診断が導入され、その有用性が数多く報告され始めている。
 以前は定量的遺伝子診断法には複雑かつ労力を要する検出法しかなかったが、近年簡便で経済的なreal time quantitative PCR法(RQ-PCR)が登場し、広く日常臨床に導入されつつある。血液領域ではRQ-PCRはリンパ球受容体遺伝子再構成(Ig,TCR),白血病特異的融合遺伝子(Bcr /Abl , PML /RARα , AML1 / MTG8 , Bcl2 /IgH など),白血病非特異的遺伝子(WT-1 遺伝子など)を用いたminimal residual disease(MRD)の検出のみならず、ウイルス,真菌,Peumocystis carinii などの感染症の診断やモニタリングにも利用され始めている。

Ⅲ.遺伝子多型とは
 同一種に属する生物であっても個々のゲノムの塩基配列は多種多様である。その変化は、表現型に病的影響を与える場合と与えない場合とがあるが、後者でかつ人口の1%以上の頻度で存在する遺伝子の変異を遺伝子多型という。
 現在、多因子遺伝病との関係で、有用とされている遺伝子多型は2種類ある。一つはDNAの配列の1箇所の塩基配列が別な塩基に変わっている、一塩基多型(single nucleotide polymorphism)で、SNPとしばしば表記されスニップと発音されるものである。
 もう一つは2個から4個の単位の配列が数回から数十回繰り返す、「繰り返し配列」の繰り返し回数の個人差で、マイクロサテライト多型(microsatellite polymorphism)と呼ばれるものである。SNPはヒトゲノム上で最も数多く存在する多型で、平均約1000塩基ごとに一ヶ所みられ、おそらくゲノム全体では200万以上はあるとみられている。マイクロサテライト多型は3万から10万塩基に一ヶ所あるとされ、約十万ヒトゲノムに存在するとされる。SNPはマイクロサテライトより、個々の情報量は少ないが数が多いため、病気との関係や薬の効果など臨床に役立つものが見つかるのではないかと期待を集めている。
 SNPは遺伝子の中の占める位置によって、区別されて呼ばれることがある。遺伝子のプロモーター領域(遺伝子の発現量を制御する領域)にあるものをrSNP、遺伝子の蛋白に翻訳される部分にあるものはcSNPとよばれ、遺伝子のイントロン(蛋白の配列や遺伝子調整にあまり関係しない)にあるものはiSNPと呼ばれている。このうち、rSNPとcSNPが遺伝子の機能に関係する可能性が高いと考えられている。SNPを含む遺伝子多型が個性に応じた医療にとって必要な情報と考えられるのは、これらrSNPやcSNPなどが、たとえば血圧、血糖、アレルギーを起こしやすいかどうか、気道過敏性、薬の効果などの個人差の少なくとも一部を説明できるのではないかと言う期待があるため、と考えられる。

Ⅳ.遺伝子多型と表現型の関連性における具体例
 近年、ヒト肥満関連遺伝子マッピングの急速な発展により、139種あまりの肥満関連遺伝子が認められ、その中でポジティブな報告として90種類(synderら2004)が確認されている。しかし、メタボリックシンドロームの発症に対して環境的および遺伝的要因がどの程度影響しているのかについては、現在明らかではない。肥満関連遺伝子の1つされるβ3アドレナリンレセプター遺伝子1)に関連して、その産物であるβ-3アドレナリン受容体は、おもに脂肪組織で見られ、脂肪分解と熱発生の調節に関与する。β-アドレナリン受容体はGタンパク質の働きを通して、エピネフリンおよびノルエピネフリンが誘導するアデニル酸環化酵素の活性化に関与すると考えられている。
 また、UCP12)遺伝子に関連して、ミトコンドリア脱共役タンパク質(UCP)は、ミトコンドリア陰イオン担体タンパク質(MACP)のファミリーに属する。UCPはATP合成から酸化的リン酸化を切り離し、エネルギーを熱として発散してしまう。これはミトコンドリアからのプロトン漏出ともよばれる。UCPはミトコンドリア膜の内側から外側への陰イオンの移動と、プロトンの外側から内側への還流移動を促進する。それは哺乳類細胞におけるミトコンドリア膜電位を降下させもする。異なるUCPには組織特異性があり、どのようにしてUCPがH+/OH-を輸送するのかに関する正確な方法はわかっていない。UCPはMACPの相同タンパク質領域を3つもつ。熱を発生させるのに特化した組織である褐色脂肪組織で、この遺伝子は発現される。
 DIO2(Thr92Ala deiodinase type 2)は、インスリン抵抗性と関連していると考えられている3)。

1)Ochi M, Osawa H, Onuma H, Murakami A, et al The absence of evidence for major effects of the frequent SNP +299G>A in the resistin gene on susceptibility to insulin resistance syndrome associated with Japanese type 2 diabetes. :Diabetes Res Clin Pract. 2003 Sep;61(3):191-8.
2)Yamada T, Katagiri H, Ishigaki Y. et al Signals from intra-abdominal fat modulate insulin and leptin sensitivity through different mechanisms: neuronal involvement in food-intake regulation. :Cell Metab. 2006 Mar;3(3):223-9
3)Mentuccia D, Thomas MJ, Coppotelli G, et al The Thr92Ala deiodinase type 2 (DIO2) variant is not associated with type 2 diabetes or indices of insulin resistance in the old order of Amish. : Thyroid. 2005 Nov;15(11):1223-7.


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