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遺伝性出血性末梢血管拡張症とは

2007.03.22 (Thu)
【概念】
 遺伝性出血性末梢血管拡張症(hereditary hemorrhagic telangiectasia,Rendu‐Osler‐Weber disease)とは、皮膚、粘膜、内臓の多発性毛細血管拡張、反復性出血、家族内発生を主徴とする疾患である。Rendu(1865)は反復性鼻出血と毛細血管拡張の合併例を報告、Osler(1901)は毛細血管拡張を伴う鼻出血の家系を報告、Weber(1907)は本症の概念を明らかにした。小児期に鼻出血を反復し、思春期以後、皮膚、粘膜に点状、線状、網状の毛細血管拡張、また星芒状血管腫様の発疹を生じ、次第に紫紅色の血管腫様に隆起する。発疹は年齢と共に増加する。発生部位は上半身に多く、顔面、とくに頬、鼻唇溝、鼻翼、唇紅、耳介など、また手指背、爪床など、内臓では、中年以後に胃・直腸粘膜の出血による吐血、下血、気管支粘膜の出血、喀血、尿路出血(血尿)、肺動静脈瘻によるチアノーゼ、ばち状指、呼吸困難、肝腫大・硬変、また痙攣、異常脳波を示す。単純性常染色体優性遺伝。軽症では局所の電気凝固、鼻出血には焼灼、タンポン、エストロゲンを用いる。貧血には鉄剤投与を行う。肺動静脈瘻では外科的治療を行う。
 
【病因】
 HHTの原因遺伝子としては、2つの遺伝子が分かっている。一つは、endoglin といわれる遺伝子で、もう一つはactivin receptor-like kinase type I (ALK-1)という遺伝子である。ともに、血管形成時の血管内膜の形成に関与している。
 endoglinの変異は、HHT1(1型)に、ALK-1の変異は、 HHT2(2型)に関係している。最近、HHT3(3型)の遺伝子として、SMAD4という遺伝子が発見された。同遺伝子が家族性に伝わるわけだが、発症形態(表現型phenotype)は、同家族でも、症例ごとに異なる。男女差はなく、10万人に1-2人の発生頻度とされている。

【診断】
 特徴は、繰り返す鼻出血、毛細血管の拡張、血管奇形が肺、脳・脊髄、消化管、肝臓などにある、家族に同様の症状がある、などである。
Curacao診断基準によれば、
1)繰り返す鼻血出
2)皮膚や粘膜の毛細血管拡張(口唇、口腔、指、鼻が特徴的)
3)肺、脳、肝臓、脊髄、消化管の動静脈瘻(動静脈奇形)
4)一親等以内に本疾患患者がいる。
 以上の4項目のうち、3つ以上あると確診definite、2つで疑診 probable or suspected、1つだけでは可能性は低いunlikelyとされる。

【症状・治療】
 鼻粘膜からの出血で鼻出血が、消化管からの出血で下血が起こる。出血は、子供よりも大人に多く、特に消化管出血は、50歳以降に多いとされている。鼻出血は、HHT患者の90%認められる。毛細血管の拡張は、思春期以降に気付かれる事が多いとされている。
 皮膚病変は、顔面、口唇、耳、結膜、体幹、四肢、手、指などに認められる。粘膜病変からのほうが、皮膚病変より出血しやすいとされている。反復する鼻出血nose bleeingが良く認められる。程度は、軽症から、輸血が必要なまでのものもある。消化管・呼吸器・尿路からの出血も起こることがある。消化管出血の原因になる血管病変は、バリウム検査では、突出や陥没した病変がないため、検出困難であり、内視鏡をしなければ発見しにくいとされている。
 動静脈瘻(arteriovenous fistula)とは、動脈と静脈が直接、短絡している状態で、その移行部の静脈が大きく拡張している場合もある(静脈瘤 varix)。肺の動静脈瘻があれば、酸素化が悪いために、全身倦怠・呼吸不全・チアノーゼ、さらに喀血などを起こすことがある。また、肝臓や中枢神経系でも同様に動静脈瘻が認められることがある。動静脈瘻が大きいと心不全を起こす場合もある(特に、肝臓に動静脈瘻がある場合)。HHT患者の50%に、肺、脳、肝臓の少なくとも一つに病変があるとされている。
 脳症状には、脳出血と脳梗塞が起因し、前者は脳動静脈瘻arteriovenous fistula (AVF)・脳動静脈奇形 arteriovenous malformation (AVM)や動脈瘤が原因で起こり、後者は肺の動静脈瘻からの塞栓症のために起こるのが原因である。また、脳膿瘍 brain abscess(脳に膿が溜まる病気です)も後者で起こることがある。脳の血管奇形は、HHTの患者さんの10-20%に認められ、動脈と静脈が直接つながる動静脈瘻 (AVF)の形をとったり、ナイダス nidusと呼ばれる異常血管構造が介在する場合がある。後者の場合、大きさにより1 cm以下であればマイクロ血管奇形 micro-AVMと呼ぶ場合があり、1cm以上の大きさの病変と区別される。大きさが、1cm以下であれば出血する可能性は高くないこと、またMR検査で検出できいない場合もある。逆に1cm以上の病変 (nidus type AVM)は、出血する可能性が高く、頭部MRI検査で必ず検出可能である。小病変は、出血しにくいため治療の対象とはせずに、経過観察されることが多い。
 脳の動静脈瘻・動静脈奇形は、多発性の場合もある。肺の病変と同じように、ある時点で脳病変がなければ、新たにできることはないと考えられる。またHHT患者には、頭痛が多いとされている。脳の動静脈瘻・動静脈奇形の治療は、容易でなく、脳神経外科の中でも治療は難しいとされている。治療方法は、外科的摘出術、血管内治療、定位放射線治療がある。定位放射線治療は、病変に高線量の放射線を照射する治療で、ガンマナイフやリニアックナイフ、サイバーナイフなどと呼ばれる方法がある。HHT患者の場合、多発例も多く、この場合すべて外科的にとることは非現実的であり、1cm以下のmicro AVMの場合は、出血率が低いと考えられており、注意深い経過観察がされることが多い。脳梗塞の原因が肺の動静脈瘻であるにも関わらず、そのような診断されずに、一般的な脳梗塞予防の薬である抗血小板薬や抗凝固薬が、投与されると消化管出血を悪化させる場合があり、重篤な貧血になる場合もある。
 皮膚病変は、レーザー治療などが行われることがある。鼻出血で出血が止まらない場合には、血管内治療として塞栓術を行う場合があるが、粘膜病変が消失するわけではないので、その効果は一過性である。治療抵抗性の鼻出血に対しては、粘膜病変を切除し、植皮を行うことがある。
 肺の動静脈瘻は、HHT患者の約30%に認められ、逆に肺の動静脈瘻があれば、その90%が、HHTと考えられている。肺の動静脈瘻があれば、HHTの可能性が非常に高いということになる。血管構造が単純なsimple type (80%)と複雑なcomplex type (20%)に分ける場合があり、肺下葉に病変があることが多い。病変を栄養する動脈の栄養血管の太さが、3mm以上あると治療の適応があるとされている。すなわち、大きなシャントがあると、そこを血栓や細菌が通り抜けやすいため閉塞した方が良いとされている(理論的には、3mmよりも小さな栄養血管の場合も、血栓や細菌が通過することがあると思いますが)。以前は外科的治療も行われていたが、現在は血管内治療(外科的治療とことなり、カテーテルを用いた非侵襲的な治療)が行われている。これは、シャント部位、またはその手前の動脈を、プラチナ製のコイルで閉塞する。開胸的な外科的治療を必要とせず、局所麻酔で治療可能である。また場合によっては(再発などがあれば)再治療の可能である。栄養血管の太さが10mm以上ある大きな動静脈瘻の場合には、コイルの逸脱(シャント部位を抜けて肺静脈側、ひいては体循環の動脈側に移動してしまいます)などの合併症の可能性が高くなるため、外科的治療が選択されることもあり、最近は内視鏡下で低侵襲手術が行わる。 肺の動静脈瘻があれば、歯科治療(抜歯など)、外傷や他の外科的治療を行なう場合、抗生物質の投与を必要としする。また、本疾患患者に点滴を行うときには、空気塞栓予防に細心の注意が必要であるとされている。


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