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消化管ポリポーシスの概念およびその鑑別

2007.03.22 (Thu)
【概念】
消化管ポリポーシスpolyposis of the alimentary tractとは、肉眼的に消化管粘膜より腸管腔内に突出した限局性隆起をポリープといい、これが消化管内に多発したものをポリポーシスpolyposisという。腫瘍性のものと非腫瘍性のものがあり、遺伝性の有無、消化管内での広がり方、消化管外の症状や組織像などにより分類される。
Ⅰ.腫瘍性
1)家族性大腸腺腫症
 家族性大腸腺腫症とは、大腸全域に腫瘍性ポリープが多発する(100個以上)家族性の常染色体優性遺伝病である。遺伝性で腫瘍性であり、必ず癌化する傾向を持つ。すなわち大腸癌の前癌状態といえる。
 病因としては、APC遺伝子の変異が知られており、APC遺伝子に変異を生じた細胞が表層に移動して増殖することによって腺腫が形成されると考えられている。
 亜型としては、Turcot症候群、Gardner症候群、Zanca症候群などがある。 Turcot症候群は、家族性ポリポーシスに脳神経系腫瘍を合併したものであり、Gardner症候群は、家族性ポリポーシスに軟部組織腫瘍を合併したもの、Zanca症候群は、遺伝性多発性軟骨性外骨腫にS状結腸ポリープを合併したものであるが、独立した症候群とするか否かは議論がわかれる。
 症状としては、20~30歳頃までに下血で発症する。40歳までには全例が大腸癌を発症する。検査所見では、注腸造影所見にて多発するポリープによって、すじこ様像を呈する。 合併症としては、先天性網膜色素上皮肥大 congenital hypertrophy of the retinal pigment epithelium,CHRPEを呈することもあるが、多くは無症状である。他には、骨腫 osteomaが生じ、良性腫瘍であり、頭蓋骨や下顎骨に好発する。


Ⅱ.非腫瘍性-過誤腫性
1)若年性ポリポーシスJuvenile polyposis
 若年性ポリポーシスは、幼少児によくみられるので、この名が付けられているが、約 1/3 は成人に発症する。直腸およびS状結腸が好発部位であり、大多数は単発性である。下血を主訴とすることが多く、しばしば頭部が自然脱落 autoamuptation を起こす。
 肉眼像には、有茎性であることが多く、表面は平滑で発赤が強く、時にびらん形成をみる。組織像としては、嚢胞状拡張を伴う異型の乏しい腺管の増生と間質の浮腫性・炎症性拡大からなる隆起性病変である。

2)Peutz-Jeghers症候群
 Peutz-Jeghers症候群でみられる多発ポリープと同様の組織像を示すポリープが、皮膚色素沈着などの所見を伴わず単発でみられる場合をPeutz-Jeghers 型ポリープと呼ぶ。症状
としては、メラニン色素沈着をきたし、幼少から口腔・口唇や手足の皮膚に黒褐色の小色素斑が出現し、初発症状となる。腸ポリポーシスは、消化管全体にわたって過誤腫 hamartoma のポリープが分布する。合併症としては、腸重積が起こり、幼少時の腸重積を契機として本症が発見されることが多い。消化管癌も起こり、大腸癌・小腸癌・胃癌などを稀に合併する。
 肉眼像では、有茎性の隆起で、頭部は若年性ポリープとは異なり分葉傾向を示す。表面の色調は白色調であることが多いが、発赤したものもみられる。
 組織像では、粘膜筋板の樹枝状増生とそれに伴う異型の乏しい腺管の増生が本態をなす。  
3)Cowden病
 Cowden病とは、消化管全域におよぶポリポーシスを呈する常染色体優性の遺伝性疾患で、最初に報告された患者名よりこの名が冠された(Lloyd and Dennis, 1963)。顔面四肢の小丘疹、口腔粘膜の乳頭腫症、さらに甲状腺、乳房、生殖器などの全身諸臓器に過誤腫性病変を生じる。中年期以降には内臓悪性腫瘍や乳癌を合併する。1997年には病因遺伝子が第10染色体上に特定され、腫瘍抑制遺伝子の PTEN と確認された。
 食道、胃、小腸、大腸に過形成性の隆起性病変が多発する。消化管ポリポーシスで、食道にびまん性ポリポーシスがみられるのは Cowden 病のみであり、これは診断的価値の高い所見である。大腸では過形成性ポリープよりも過形成性結節の多発がみられることが多い。

Ⅲ.非腫瘍性-炎症性ポリープ
1)炎症性ポリポーシス Inflammatory polyposis
 炎症性ポリポーシスは潰瘍性大腸炎、Crohn病、腸結核などの炎症性疾患に伴ってみられる多発性の粘膜隆起である(Morson,1972)。広義の炎症性ポリポーシスには、潰瘍の取り残した島状粘膜がポリープ様に突出してみえる“偽ポリポーシス(pseudopolyposis)”と、粘膜の過剰な再生(過形成)により生じたポリープの多発からなる狭義の炎症性ポリポーシスとが含まれている。単発性の炎症性ポリープの頻度は低い。
 肉眼像では、楕円形、棍棒状、紐状など不整形で奇妙な形態のものが多い。活動性炎症が存在する場合は発赤調で、炎症が消褪すると褪色調を呈する。組織像では、再生性あるいは過形成性の腺管の増殖により構成され、粘膜固有層には種々の程度の炎症所見がみられる。単発の場合は若年性ポリープとの鑑別が困難なことがある。

2)CAP ポリポーシス CAP polyposis
 CAP ポリポーシスとは、直腸、S状結腸に多発する特異な炎症性ポリープで、1985年に Williams らによって提唱された。隆起病変の頂部に帽子(cap)状の線維性膿性滲出物の付着した肉芽組織がみられることから命名された。
 病因は、直腸粘膜脱症候群(MPS)との臨床的・病理学的類似性から下部大腸の粘膜脱や運動機能異常の関与が示唆されている。
 肉眼像では、直腸・S状結腸に存在するたこいぼ状あるいは芋虫状隆起で、隆起頂部に発赤、膿性白苔の付着および、びらんがみられる。組織像では、隆起の頂部に線維性膿性滲出物の付着した肉芽組織がみられる。病変部粘膜固有層に炎症細胞浸潤と線維筋症が認められることが多い。

Ⅳ.非腫瘍性-その他
1)過形成性ポリープ Hyperplastic polyp
 過形成性ポリープは、かつては化生性ポリープ(Morson, 1962)と呼ばれた病変で、腺管の鋸歯状変化を伴う過形成性増殖からなる隆起性病変である。
 肉眼像では、通常は5mm以下の無茎半球状あるいは平坦な隆起を呈する。隆起表面は平滑で光沢のある白色調を示す。大型のものは表面が脳回転状のことがある。
 組織像では、分岐のほとんどない延長した腺管の増生がみられ、腺管の上半部には鋸歯状の凹凸(saw-tooth appearance, serrated )が認められる。増殖細胞は腺管の基底側1/3から1/2に分布している。

2)良性リンパ濾胞性ポリープ Benign lymphoid polyp
 良性リンパ濾胞性ポリープとは、反応性リンパ濾胞の粘膜固有層および粘膜下層での限局性増殖からなる隆起性病変。大部分は直腸に発生し、rectal tonsil 、benign lymphoma 、pseudolymphoma とも呼ばれる。
 肉眼像では、大きさは通常 1cm 以下で、白色調の平滑な半球状隆起を示す。ときに、多発するが大きさは均一で、分布も均等である。組織像では、粘膜固有層深層から粘膜下層に濾胞構造を伴うリンパ組織の反応性増生がみられる。低悪性度MALT型悪性リンパ腫との鑑別が問題になることがある。

3)Cronkhite-Canada症候群 Cronkhite-Canada syndrome
 Cronkhite-Canada症候群とは、消化管ポリポーシスに皮膚色素沈着、爪甲の萎縮・脱落、および脱毛を伴う非遺伝性の疾患である(Cronkhite and Canada, 1955)。ポリポーシスに起因する消化管からの蛋白漏出による栄養障害が、これらの外胚葉系の異常の原因と考えられている。50歳,60歳代に好発し、本邦では男性に多い。ポリープは胃と大腸に多発し、比較的高率に消化管癌や腺腫の合併がみられる。
 肉眼像では、浮腫状で発赤の著明なポリープがびまん性にみられ、ポリープ間の介在粘膜にも浮腫や発赤が認められる。ポリープや介在粘膜に粘液の付着が目立つ。組織像では、
腺管の嚢胞状拡張と蛇行を伴う過形成と、粘膜固有層の浮腫性・炎症性拡大がみられる。この変化はポリープのみならず、びまん性に介在粘膜にもみられる。
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