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統合失調症の病態・原因

2007.07.19 (Thu)
【病態・原因】
・遺伝的要因
Luxenburger, H.の報告によると一般人口の0.85%と比較して、近親者の発病の頻度は、子16.4%、同胞10.8%、孫3.0%、甥・姪1.8%と高率である。Huber, G. による統合失調症の家族危険率についての各種報告のまとめによると、一般人口の0.85%と比較して、子が9~16%(mean 13.7±1.0)、同胞が8~14%(mean 10.4±0.3)、両親とも病者である場合の子が40~68%、異父(母)同胞が1~7%(mean 3.5±1.7)とし、近い血縁関係であるほど罹病危険率が高いことが示されている。

また、一卵性双生児での発病一致率は約50%であり、二卵性の0~10%と比較して優位に高率であることからも、遺伝的要因が関与していることは明らかである。また、分子遺伝学的研究として、家族性の統合失調症に共通の遺伝子を探す連鎖研究や、患者群と健常群である特定のDNA異常の出現率を比べ、疾患に関わる遺伝子を探す相関研究が行われている。現在、カルシニューリン系遺伝子は、これまでの研究から人種を超えた共通の原因遺伝子と考えられている。

・形態学的要因
1988~2000年に脳の形態学的評価に関連した報告をまとめたShentonの総説(2001)によると、上側頭回の減少(100%)、側脳室の拡大(80%)、内側側頭葉構造性の減少(74%)、第3脳室の拡大(73%)、頭頂葉の体積減少(60%)、前頭葉の体積減少(59%)、視床の体積減少(42%)であった。すなわち、統合失調症では「前頭葉から側頭葉にかけての形態的変化が大きい」ことが示されている。だが、これらの形態異常は神経の発生・分化の異常によるとも考えられている(→発達障害仮説)。

・生化学的要因
患者の生化学的所見から、ドパミン仮説、興奮性アミノ酸(グルタミン酸)仮説などが提唱されている。
[ドパミン仮説]
中脳辺縁系におけるドパミンの過剰が、幻覚や妄想といった陽性症状に関与しているという仮説。実際にドパミンD2受容体遮断作用をもつ抗精神病薬が陽性症状に有効であること、死後脳研究、陽電子放出断層撮影(PET)などの脳機能画像を用いた研究からも支持されている。
[グルタミン酸仮説]
麻酔薬として開発され、のちに精神異常の副作用の為使用が断念されたフェンサイクリジンを投与すると、統合失調症様の陽性症状及び陰性症状がみられたこと、フェンサイクリジンがグルタミン酸受容体(NMDA受容体)の遮断薬であることがのちに判明し、グルタミン酸受容体(NMDA受容体)の異常が統合失調症の発症に関与しているという仮説。実際に欧米を中心に従来の抗精神病薬とグルタミン酸受容体(NMDA受容体)作動薬であるグリシン、D-サイクロセリン、D-セリンを併用投与すると抗精神病薬単独投与より陰性症状や認知機能障害の改善度が高くなることが報告されている。将来的に、グルタミン酸受容体に作用する抗精神病薬の開発が期待されている。

・精神生理学的要因
統合失調症において生理学的な異常を示す反応として、prepulse inhibision(PPI)の異常が報告されている。PPIは、音などの強い感覚刺激による驚愕反応が、刺激を与える直前に、それ自身では驚愕反応を引き起こさない程度の弱いプレパルス刺激をあらかじめ負荷することにより驚愕反応が低下する現象である。脳内情報処理回路の障害を反映すると考えられる。これは、統合失調症例では弱い刺激が反復して与えられることで徐々に応答が消滅する慣れの機能に障害を認め、生理学的には過覚醒状態にあるとする考えがある。

・心理学的要因
統合失調症の発病や症状の増悪に、心理学的要因が関与していると考えられているが、現在では、心理学的要因は発病後の症状悪化要因ではあっても、決して原因ではない、とされている。 脆弱性-ストレスモデルともいわれる。これは、Zubinらが提唱し、統合失調症が誰にでも等しく起こりうる事態ではなく、個体により脆弱性の違いがあり、その個人差ごとに十分な強度のストレスが加わって発病するという説である。
さらにCiompiは、Zubinの脆弱性モデルを取り入れ、統合失調症の経過について3つの相からなる長期展開モデルを発表した。第1相(病前期):生物学的因子と心理社会的因子から影響を受けながら脆弱性(自我脆弱性Ichschwache)が形成されていく、病前の発展過程と位置づけられた(病前の進展過程)。
第2相(病相期):脆弱性に非特異的ストレスが加わって発病する過程である(急性精神病性代償不全)。
第3相(病後期):生物学的・心理社会的諸因子の影響によって、完全治癒から残遺状態までさまざまな転帰をたどる過程とされた(病後の長期進展過程)。

・病前性格
内気、小心、敏感な気質だが反面、冷淡、鈍感な気質もある人(分裂気質)に多いとされている。また、細長-無力型の体格と統合失調症との間に親和性が認められると報告されている(ただし、疫学的な証明などはされていない)。


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