体質性黄疸の鑑別
2008.01.11 (Fri)
体質性黄疸とは、肝細胞の先天的ビリルビン代謝異常による黄疸である。間接ビリルビン優位のものと、直接ビリルビン優位のものがある。国試レベルでは、以下のような鑑別により分類ができると考えられる。

・間接ビリルビン優位→Gibert病、Crigler-Najjar症候群
・直接ビリルビン優位→Dubin-Johnson症候群、Rotor症候群
直接ビリルビン優位のものは、「Direct」と覚える。すなわち、Dubin-Johnson症候群、Rotor症候群である。

小児発症→Crigler-Najjar症候群、Rotor症候群

・低カロリー食試験にて、間接ビリルビン上昇→Gibert病
・腹腔鏡にて黒色肝→Dubin-Johnson症候群
・BSP試験で再上昇、ICG試験正常→Dubin-Johnson症候群
・BSP試験で再上昇、ICG試験異常→Rotor症候群
【補足】
ICGの15分値は肝血流量をよく反映するとされる。50%以上は異常高値であり、Rotor症候群、体質性ICG排泄異常症などの、ICGに特異的な排泄異常によることが多い。
血管内に注入されたBSPは大部分がアルブミンと結合する。肝では肝細胞でグルタチオン抱合を受け、胆汁中に大部分が排泄される。BSP試験の値は、肝血流量と、肝細胞能を示すとされる(ただ、近年はあまり行われないとのこと)。5~15%(中等度上昇)ではDubin-Johnson症候群、15%以上(高度上昇)ではRotor症候群が考えられる。
【例題01】
28歳の男性。4年前、軽度の黄疸を指摘されたが、その他の肝機能は正常と言われ放置していた。最近、再び皮膚の黄染に気付き、精密検査のため来院した。赤血球412万、Hb 12.5g/dl、白血球5,400。血清生化学所見:総ビリルビン4.2mg/dl、間接ビリルビン3.8mg/dl、GOT 36単位(正常40以下)、GPT 34単位(正常35以下)、アルカリホスファターゼ230単位(正常260以下)。低カロリー食試験によって血清ビリルビン値は2倍以上に上昇した。考えられるのはどれか。
a Dubin-Johnson症候群
b Rotor型高ビリルビン血症
c Gilbert病
d Crigler-Najjar症候群
e 溶血性黄疸
問題:88E20
答え: c Gilbert病
解説:
「総ビリルビン4.2mg/dl、間接ビリルビン3.8mg/dl」であり、間接ビリルビン優位である。故にGilbert病、Crigler-Najjar症候群が考えられる。
なおかつ、「28歳の男性。4年前、軽度の黄疸を指摘された」とあるので、小児発症ではない。故に、Crigler-Najjar症候群の可能性は低くなる。故にGilbert病が正解となる。
【問題02】
20歳の男性。子供のころからしばしば眼球結膜の黄染を指摘されていた。最近、皮膚の黄染が気になり、特に自覚症状はないが来院した。腹部に肝、脾を触れない。血清生化学所見:総ビリルビン7.1mg/dl、直接ビリルビン6.2mg/dl、GOT 14単位(正常40以下)、GPT 19単位(正常35以下)、アルカリホスファダーゼ260単位(正常280以下)。腹腔鏡写真では異常はない。
この疾患について正しいのはどれか。
(1) 尿中コプロポルフィリンが増加している。
(2) 肝細胞内のグルクロン酸転移酵素が欠損している。
(3) ICG排泄は遅延する。
(4) 経口胆嚢造影で胆嚢は描写される。
a (1)(3)(4)のみ
b (1)(2)のみ
c (2)(3)のみ
d (4)のみ
e (1)~(4)のすべて
問題:86D18
答え: a (1)(3)(4)のみ
解説:「総ビリルビン7.1mg/dl、直接ビリルビン6.2mg/dl」で直接ビリルビン優位であり、なおかつ「子供のころからしばしば眼球結膜の黄染を指摘されていた」と小児発症であるので、Rotor病である(腹腔鏡所見で異常なしであることも、それを支持する。Dubin-Johnson症候群なら、黒色肝をしめす)。
○(1) 尿中コプロポルフィリンⅠ、Ⅲが増加している。
×(2) 直接ビリルビンの細胆管への排泄障害などを呈する。
○(3) ICG、BSP検査は、ともに延長がみられる。
○(4) 経口胆嚢造影は良好である。Dubin-Johnson症候群では、不良である。
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Dubin-Johnson | Rotor | Gilbert | Crigler-Najjar | |
発症年齢 | 小児期にやや多い | 小児期にやや多い | 20~30歳代 | 新生児期 |
ICG | 正常 | 延長 | - | - |
BSP | 再上昇 | 延長 | - | - |
他の肝機能 | 直接ビリルビン↑ | 間接ビリルビン↑ | ||
肉眼所見 | 黒色肝 | 正常 | 正常 | 正常 |
肝組織所見 | 肝細胞内褐色顆粒 | 正常 | 正常 | 正常 |

・間接ビリルビン優位→Gibert病、Crigler-Najjar症候群
・直接ビリルビン優位→Dubin-Johnson症候群、Rotor症候群
直接ビリルビン優位のものは、「Direct」と覚える。すなわち、Dubin-Johnson症候群、Rotor症候群である。

小児発症→Crigler-Najjar症候群、Rotor症候群

・低カロリー食試験にて、間接ビリルビン上昇→Gibert病
・腹腔鏡にて黒色肝→Dubin-Johnson症候群
・BSP試験で再上昇、ICG試験正常→Dubin-Johnson症候群
・BSP試験で再上昇、ICG試験異常→Rotor症候群
【補足】
ICGの15分値は肝血流量をよく反映するとされる。50%以上は異常高値であり、Rotor症候群、体質性ICG排泄異常症などの、ICGに特異的な排泄異常によることが多い。
血管内に注入されたBSPは大部分がアルブミンと結合する。肝では肝細胞でグルタチオン抱合を受け、胆汁中に大部分が排泄される。BSP試験の値は、肝血流量と、肝細胞能を示すとされる(ただ、近年はあまり行われないとのこと)。5~15%(中等度上昇)ではDubin-Johnson症候群、15%以上(高度上昇)ではRotor症候群が考えられる。
【例題01】
28歳の男性。4年前、軽度の黄疸を指摘されたが、その他の肝機能は正常と言われ放置していた。最近、再び皮膚の黄染に気付き、精密検査のため来院した。赤血球412万、Hb 12.5g/dl、白血球5,400。血清生化学所見:総ビリルビン4.2mg/dl、間接ビリルビン3.8mg/dl、GOT 36単位(正常40以下)、GPT 34単位(正常35以下)、アルカリホスファターゼ230単位(正常260以下)。低カロリー食試験によって血清ビリルビン値は2倍以上に上昇した。考えられるのはどれか。
a Dubin-Johnson症候群
b Rotor型高ビリルビン血症
c Gilbert病
d Crigler-Najjar症候群
e 溶血性黄疸
問題:88E20
答え: c Gilbert病
解説:
「総ビリルビン4.2mg/dl、間接ビリルビン3.8mg/dl」であり、間接ビリルビン優位である。故にGilbert病、Crigler-Najjar症候群が考えられる。
なおかつ、「28歳の男性。4年前、軽度の黄疸を指摘された」とあるので、小児発症ではない。故に、Crigler-Najjar症候群の可能性は低くなる。故にGilbert病が正解となる。
【問題02】
20歳の男性。子供のころからしばしば眼球結膜の黄染を指摘されていた。最近、皮膚の黄染が気になり、特に自覚症状はないが来院した。腹部に肝、脾を触れない。血清生化学所見:総ビリルビン7.1mg/dl、直接ビリルビン6.2mg/dl、GOT 14単位(正常40以下)、GPT 19単位(正常35以下)、アルカリホスファダーゼ260単位(正常280以下)。腹腔鏡写真では異常はない。
この疾患について正しいのはどれか。
(1) 尿中コプロポルフィリンが増加している。
(2) 肝細胞内のグルクロン酸転移酵素が欠損している。
(3) ICG排泄は遅延する。
(4) 経口胆嚢造影で胆嚢は描写される。
a (1)(3)(4)のみ
b (1)(2)のみ
c (2)(3)のみ
d (4)のみ
e (1)~(4)のすべて
問題:86D18
答え: a (1)(3)(4)のみ
解説:「総ビリルビン7.1mg/dl、直接ビリルビン6.2mg/dl」で直接ビリルビン優位であり、なおかつ「子供のころからしばしば眼球結膜の黄染を指摘されていた」と小児発症であるので、Rotor病である(腹腔鏡所見で異常なしであることも、それを支持する。Dubin-Johnson症候群なら、黒色肝をしめす)。
○(1) 尿中コプロポルフィリンⅠ、Ⅲが増加している。
×(2) 直接ビリルビンの細胆管への排泄障害などを呈する。
○(3) ICG、BSP検査は、ともに延長がみられる。
○(4) 経口胆嚢造影は良好である。Dubin-Johnson症候群では、不良である。
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