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胸腰椎移行部の神経徴候

2006.12.02 (Sat)


胸腰椎移行部の神経徴候



【病態生理・病因】
 比較的多く遭遇する脊椎脊髄外傷の原因として、若年者の交通事故,スポーツ外傷,中高年者の高所からの転落や転倒があげられる。これら受傷時に、屈曲,伸展,回旋,圧迫などの外力が複合的に脊椎に作用し、脊椎,脊髄損傷ならびに靭帯損傷がもたらされる。なかでも頸椎と胸腰椎移行部の2カ所が損傷を受けやすいとされている。
 脊椎外傷の重篤度や予後は、外力の強さや方向,脊椎管の形態,患者の年齢などにより異なるが、脊髄や神経根に損傷が及んだか否かにより大きく左右される。また脊髄損傷は外力の強さとともに、脊椎の既存の背景疾患が強く関与する。
 軽微な外傷や外傷機転により強い脊髄症状がみられる場合、脊椎管狭窄症,椎間板ヘルニア,骨棘,脊椎靭帯骨化症などの考慮が必要である。

【症状と診断】
 長軸方向の力に、屈曲や回転力が加われば胸髄は損傷され、対麻痺に至る。一方、胸椎は水平方向の力には影響が少ないが、肋骨,胸膜,肺の損傷,特に血気胸が起こる。
 関節突起や椎弓根部の骨折,椎体の圧迫骨折を起こし、上位椎体が前方にすべり、大血管や腹部臓器の損傷を引き起こすことがある。

【神経学的徴候】
 重症頭部外傷や出血性ショック,呼吸不全を伴わないかぎり意識は清明に保たれている。全身状態を考慮して、四肢の動き,感覚障害のレベル,深部腱反射の検討に加え、膀胱や肛門括約筋機能も調べ、脊髄損傷の高位ならびに横位診断を得る。
 麻痺が脊髄レベルか馬尾神経レベルか、またはその混在型か診断する必要がある。
 障害が下位胸髄レベルにあれば、臍の上下で筋力の差が生じる。仰臥位の患者の頭を持ち上げると臍の上方移動がみられ(Beever徴候)、T10髄節の障害が推定される。
 脊髄円錐部のみが障害を受ければ、筋力は正常に保たれるが、膀胱直腸障害と会陰部の知覚鈍麻をきたす(pure conus syndrome)。この部の障害は筋力が正常なために見逃す恐れがあり、排尿・排便の状態、会陰部を含めた詳細な知覚検査が必要である。
 さらに下位に損傷が加われば、脊髄症状ともに馬尾神経障害を来し、痙性下肢麻痺と馬尾末梢神経麻痺症状の混在がみられる。

【治療】
脊髄損傷に対する治療法は確立されておらず、完全損傷の場合は機能回復の期待はできない。したがって、治療の目的は以下である。
.全身管理
 ①局所の安静:脊柱支持性破綻の可能性があり,患者搬送時,診察,X線撮影などに際しては,二次的脊髄損傷を起こさないように細心の注意を払う必要がある。
 ②呼吸管理:C4髄節より上位の損傷では,呼吸筋はすべて麻痺し,人工呼吸が必要となる。
 C4髄節以下の損傷では,横隔膜は麻痺せず肋間筋は弛緩性麻痺となる.換気量の低下に伴い,呼吸管理の必要なことがある。
 ③循環管理:血管運動神経の麻痺と筋肉の弛緩性麻痺が相俟って,末梢血管での血液貯留が起こり,有効循環血液量は著しく減少し,血圧低下を来す.また,交感神経麻痺による徐脈となる。
 適切な補液,硫酸アトロピン,昇圧薬などによる循環管理が要求される。
 ④尿路管理:膀胱の弛緩性麻痺による尿閉状態である.導尿が必要であるが,その際,血圧の低下に注意する。
.脊椎,脊髄損傷に対する処置
 ①安定型脊椎損傷:椎体または脊椎突起に骨折があっても,椎間板,靭帯,関節包などの脊椎連結機構が保たれ安定している場合,脊柱の異常な配列を整復し,外固定を装着する保存療法が主体になる。
 ②不安定型脊椎損傷:頸椎脱臼に対して,Gardner-Wells tongsなどの頭蓋牽引装置を用いて整復を行う.4kgより始め徐々に増量し整復状態を確かめる。数時間以内,長くても24時間以内に整復不可能な場合は,無理をせずに早期に手術して整復固定を行う。
 ③手術の目的は,神経障害を最小限に抑制し脊髄機能の回復をはかるため,脊髄に対する圧迫因子(骨片や椎間板)を除去し,脊柱の配列を整復し,脊椎の安定性を確立する内固定と外固定を行い,できるだけ早期にリハビリテーションが施行できるようにすることである。
 ④急性期脊髄損傷に対しては、ステロイド短期大量療法を行う。第二次米国急性脊髄損傷研究班による臨床試験の結果、メチルプレドニゾロンコハク酸の短期大量投与した患者においては、非投与群に比べて,受傷6カ月後の時点で運動や感覚障害の有意義な改善が得られるとされた。またわが国においても臨床試験で同様の結果が得られている。
.処方例
 メチルプレドニゾロン(ソル・メドロール)を初回量30mg/kg,15分間で静注し,45分休薬後5.4mg/kg/時間を23時間持続投与する。


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