循環器疾患の聴診所見とエコー所見
2008.01.30 (Wed)
聴診所見 | エコー所見 | |
大動脈弁狭窄症 | ・ダイヤモンド型収縮期雑音 胸骨第二肋骨に最強点(thrill触れる)、頸部に広く放散 |
・Mモード心エコー図→大動脈弁の収縮期開放が狭く、拡張期に大動脈の中央からはずれた位置にある。 ・断層心エコー図→収縮期に大動脈弁がドーム状を呈する。 ・ドプラ心エコー図→大動脈弁部で血流速度が増加している。 |
大動脈弁閉鎖不全症 | ・拡張期逆流性雑音(灌水様) ・収縮期駆出性雑音(2RSB)、Austin-Flint雑音 |
・カラードップラー法→大動脈弁逆流の有無が検出でき、大動脈造影所見とよく相関し、その重症度を半定量的に評価できる。 |
僧帽弁狭窄症 | ・Ⅰ音の亢進 ・Opening snap ・拡張期ランブル ・前収縮期雑音 ・重症例でGraham-Steel雑音 |
・長軸断面図→僧帽弁の前尖・後尖の動きが制限。左房の拡大や時に左房内に血栓 ・短軸断面図→弁口面積の狭小化 |
僧帽弁閉鎖不全症 | ・全収縮期雑音 ・Ⅰ音の減弱 ・Ⅱ音の幅広い分裂 ・Ⅲ音とそれに続く拡張期ランブル |
・カラードップラー法→左室収縮期に超音波の発射源から遠ざかるシグナル(逆流波) ・左房や左室が拡張している症例では、それぞれの内径の拡大所見 僧帽弁の支持組織に異常がある場合、診断に有用 |
僧帽弁逸脱症候群 | ・収縮中期クリック ・収縮後期雑音 |
・カラードップラーエコー→左房に向かう逆流ジェット ・僧帽弁の逸脱はMモード心エコー図→弁尖の後方運動として表現され、全収縮期のハンモック状の陥凹、収縮中期~後期の左房内突出(疑問符を横に寝かせた形と形容される)、左房内への反転などがみられる。 断層心エコー法(長軸方向)→ (1)前後尖の接合点の後方偏位 (2)収縮期に前尖,または後尖が弁輪を越えて左房内に突出すること (3)収縮期に後尖弁輪が付近の心筋上にめくれ上がるような動きをすること |
心房中隔欠損症 | ・Ⅱ音の固定性分裂 ・肺動脈収縮期駆出性雑音 ・三尖弁拡張期性開放音およびランブル ・Ⅱp音亢進 |
・カラードプラ断層法→左-右短絡や僧帽弁逆流、三尖弁逆流 ・断層心エコー図→右房と右室の拡大があり、心房中隔の中央に欠損孔 Mモード心エコー図→右室の容量負荷が右室径の拡大と心室中隔の奇異性運動 |
心内膜症欠損症 | ・第2肋間胸骨左縁→心房中隔欠損の収縮期雑音とII音の固定性分裂 ・心尖部→逆流性収縮期雑音と拡張期ランブル |
Mモード心エコー図→心室中隔の奇異性運動があり、僧帽弁と三尖弁が心室中隔を突き抜けて動くようにみえる。 ・断層心エコー図→心房中隔下部に欠損孔がある。完全型ではこの欠損孔が心室中隔欠損とつながっている。 ・ドプラ断層法→欠損孔を通る短絡が検出される |
心室中隔欠損症 | 軽症~中等度:全収縮期雑音(胸骨左縁第3・4肋間)+thrill Ⅱ音の病的分裂 拡張中期rumble | ドプラ断層心エコー図→欠損孔を通じての左-右短絡 ・左-右短絡の多い場合には肺動脈と左房と左室が拡大 ・中~大欠損孔は断層心エコー図により心室中隔の孔として認められる |
重症:Ⅱ音亢進、Graham-steell雑音、PAの収縮期雑音 | ||
Fallot四徴症 | ・ダイアモンド型駆出性収縮期雑音 ・ⅡAの亢進した単一Ⅱ音 |
断層心エコー図→心室中隔膜様部に欠損孔があり、その上から心室中隔に騎乗して太い大動脈が起始する。右室漏斗部と肺動脈弁に狭窄がある。 ドプラ心エコー図→右室流出路の狭窄と右室から大動脈への右-左短絡 |
Ebstein奇形 | ・収縮期雑音 ・単一Ⅱ音(Ⅱp音↓) |
断層心エコー図→三尖弁中隔尖の右室心尖部への偏倚が認められる。 |
閉塞性肥大型心筋症 | ・収縮期駆出性雑音(胸骨左縁下部) ・Ⅳ音(+) ・Ⅱ音奇異性分裂、時にthrill |
・非対称性中隔肥厚(asymmetric septal hypertrophy; ASH) ・大動脈弁の収縮中期半閉鎖(mid-systolic semiclosure) ・拡張期弁後退速度(DDR)低下 |
アミロイドーシス | IV音およびIII音の高率な出現 | Sparkling Sign、著明な拡張障害 |
拡張型心筋症 | ・Ⅰ音減弱:左室収縮能の高度な低下 ・Ⅱ音:肺高血圧の存在でⅡpの亢進 ・Ⅲ音:左室への急速流入、僧帽弁閉鎖不全(MR)の合併でもみられる。 ・Ⅳ音:左室拡張末期圧上昇、心尖拍動図でA波増高。 ・奔馬調律(gallop rhythm):頻脈の場合,Ⅰ音,Ⅱ音とⅢ音あるいはⅣ音が関与する。重合奔馬調律(summation gallop rhythm)を呈することもある。 ・収縮期逆流性雑音:弁輪拡大に起因する房室弁逆流。心不全の改善とともに減弱、消失する傾向がある。 ・ラ音:肺うっ血の存在.喘息様の連続性ラ音を呼気時に聴取する場合がある |
・左室あるいは右室径の拡大 ・左室収縮能の低下 ・僧帽弁開放が軽度 |
肺血栓塞栓症 | Ⅱ音肺動脈成分亢進,収縮期雑音 | 右室壁の hypokinesis(低収縮)、心室中隔の左室側への偏位(D shape) |
感染性心内膜炎 | ・感染弁では、疣贅の付着や弁および弁支持組織の破壊(腱索断裂など)を認める。 ・逆流血流は弁組織の破損部から起こるため,多方向性あるいは偏位した乱流 |
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心タンポナーデ | ・心臓周囲の心膜液によるecho-free space ・大量の液貯留では心臓の振子様運動 |
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