医学生/研修医向け 基礎医学 内科学 ゴロ合わせ 内科認定医試験
診療データ TNM分類一覧 病期(ステージ)一覧 抗菌薬 診断基準・ガイドライン一覧

当サイトのページランキング

続発性月経困難症をきたす疾患の鑑別

2008.02.06 (Wed)
月経困難症とは、月経時にけいれん様の下腹部痛や腰痛を始めとする種々の随伴症状をもたらす症候群である。器質的疾患を伴わない原発性月経困難症と、子宮内膜症や子宮腺筋症などに起因する続発性月経困難症とに分類される。

以下では、続発性月経困難症に関する鑑別ポイントについて記す。

  子宮内膜症 子宮腺筋症 子宮筋腫
概念 子宮内膜組織が異所性に増殖する疾患のこと 子宮筋層内に子宮内膜組織が存在するもの 子宮平滑筋の良性腫瘍
症状 ①続発性月経困難症
②性交痛
③不妊
④下腹部、腰痛、肛門痛、排便痛
⑤妊娠すると症状は軽快
①月経痛
②過多月経
③不性性器出血
④不妊症
腫瘤の大きさおよび位置により過多月経、月経困難症、周囲臓器への圧迫症状、不妊、習慣流産などの症状を呈する。
頻度は少ないが流産や早産の原因になることもある。

粘膜下腫瘍と筋層内筋腫にみられる症状→
①過多月経
②月経困難症
③不妊

粘膜下筋腫だけにみられる症状→
①陣痛様下腹部痛
②接触出血
③筋腫分娩(筋腫が子宮口外へ出たもの)

漿膜下筋腫
①無症状のことが多い。
②小児頭大異常では、下腹部腫瘤感、頻尿、便秘などの症状
②尿管を圧迫し、水腎症、水尿管
③有茎性漿膜下筋腫が茎捻転を起こし、急性腹症
診断 1)「次第に増強する月経痛」という特徴的な症状

2)内診
①Douglas窩に硬結
②卵巣腫大を認めることもある。
③子宮の増大

3)血中CA125上昇

4)エコーにて、テール嚢胞

5)骨盤部単純MRI
①卵巣子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)
②脂肪抑制T1強調像でintensityが不変
6)腹腔鏡検査:確定診断に必要
1)次第に増強する月経痛と過多月経

2)内診
①子宮は鵞卵大で可動性があり、表面平滑
②Douglas窩に有痛性抵抗がないこともある

3)MRIが最も診断価値が高い

4)子宮壁の肥厚、高輝度のびまん性均一で高密度のエコー

5)CA125高値(子宮内膜症よりも)
MRIが最も優れている。一般的にT2強調画像において子宮内膜は高信号域、筋腫核は境界明瞭な低信号域として描出される。

エコーでは、一般に子宮筋腫は周囲筋層との境界が明瞭なhypoechoicな腫瘤として観察される。
治療 ・不妊を主訴とする場合→通常の不妊検査

・治療を進めるとともに、早期の腹腔鏡下手術や生殖補助医療が行われる。

・現在、挙児希望はないが妊孕性を温存したい場合→薬物療法(月経時のみの鎮痛薬投与、中長期的には経口避妊薬による偽妊娠療法、ダナゾール・GnRHアゴニストによる偽閉経療法)または保存手術

・生殖年齢後期で挙児希望のない場合→根治手術(単純子宮全摘術など)まで考慮
薬物療法を行い、無効なら手術療法(単純子宮全摘術)

薬物療法には、①プロゲストーゲン投与、②ダナゾール投与、LH-RHアナログ療法などがある。
手術療法:子宮全摘術と筋腫核出術がある。

薬物療法:GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)アナログが使われる。


特に、以下のような鑑別ポイントが、国試において重要である。
・内診でDouglas窩に圧痛を伴う硬結を触れる、「次第に増強する月経痛」という特徴的な症状→子宮内膜症
(逆に、「内診で特記すべき所見がない」「Douglas窩に硬結を触れない」「月経困難症はない」といったものが無かった場合、子宮内膜症の可能性は低い)

・子宮腺筋症では、月経痛と不性性器出血がよく見られる。

・不妊合併率は、子宮内膜症の方が高い。

・月経困難症は、子宮腺筋症の方が強い。

・CA125は、子宮筋腫の方が高値を示す。

【例題】
32歳の女性。未経妊。月経痛と3年間の不妊とを主訴に来院した。基礎体温は2相性で、卵管の通過性と性交後試験とに異常を認めない。夫の精液所見は正常。内診で右卵巣が鵞卵大に腫大し、可動性不良である。直腸診でDouglas窩に硬結と圧痛とを認める。超音波検査で右付属器部に径8cm、内容が高輝度の嚢胞を認める。血中プロラクチン12ng/ml(基準30以下)。血清CA125 128U/ml(基準35以下)。骨盤部単純MRIのT1強調像で右卵巣に白い高信号の嚢胞を認め、脂肪抑制T1強調像でも抑制されることなく高信号(白)のままであった。 治療として最も適切なのはどれか。
a クロミフェン療法
b ゴナドトロピン療法
c ブロモクリプチン療法
d 体外受精・胚移植
e 腹腔鏡下卵巣嚢胞摘出術

問題:100F42

答え:e 腹腔鏡下卵巣嚢胞摘出術 正答率:83%

解説:

①月経痛、不妊、Douglas窩に硬結と圧痛(→子宮内膜症を疑う)
②基礎体温は2相性、卵管の通過性と性行後試験に異常を認めない
③精液試験は正常(→男性因子に問題なし)
④右卵巣腫大、右付属器に径8cm,内容高輝度の嚢胞
⑤CA125 128U/ml(→軽度上昇,子宮内膜症の徴候)
⑥骨盤部MRIからは、子宮内膜症性嚢胞(卵巣チョコレート嚢胞)であることがわかる。

これらから、子宮内膜症(右卵巣における子宮内膜症性嚢胞)が診断として考えられる。

本症例の場合、不妊検査は異常ないので薬物療法は考慮しなくてよい。子宮内膜症が原因の不妊であり、単純に右卵巣腫瘍の治療を考える。

×a クロミフェンは、第一度無月経の場合の排卵誘発薬である。子宮内膜症性嚢胞の治療にはならない。

×b ゴナドトロピン薬は、排卵誘発や黄体刺激に用いられ、子宮内膜症性嚢胞の治療には用いられない。子宮内膜症ではGn-RHアナログを使用する。

×c ブロモクリプチンは、高プロラクチン血症による無月経、不妊の治療薬である。

×d 卵巣チョコレート嚢胞を合併していると、排卵にも悪影響があるかもしれない。まずは子宮内膜症性嚢胞の治療を優先させるべきである。

○e 子宮内膜症性嚢胞の手術療法を行う。

【関連記事】
妊娠高血圧症候群

胎児機能不全 non-reassuring fetal status


トップページへ  |  この記事へのリンク  |  産婦人科
Adminブログパーツ